マカロニ好きで

蔵臼金助:著の『マカロニウエスタン殺戮と銃撃のバラード』(徳間書店:2019年3月31日発行)を読了。
友人だから言うのではありませんが、私が知っている中で著者ほど西部劇に出てくる銃器に関して詳しい人はいません。銃器ネタに関しては100%信用がおけます。それと、マカロニウエスタンにかける熱情も半端じゃありません。分冊百科マカロニウエスタン傑作DVDコレクション”の発行を仕掛けたのも見事。

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マカロニウエスタン銃器「熱中」講座』に続く2作目ということで期待しましたが、全体的にうまく整理できていない感じがします。ツイッターやブログなどで、その時その時に読む分には項目として面白いのですが、1冊の本となると散漫な印象を与えます。第1章の「荒野の用心棒」のように、銃器・ファッション・音楽・雑学を網羅して、作品ごとに解説していけば纏まりが良くなったと思うので残念。ちなみに、『マカロニウエスタン銃器「熱中」講座』についてはここへ⇒https://nostalji.hatenablog.com/entry/20100724
リハビリ専門の病院への母の転院が決まったので帰省します。日記は当分の間、休みま~す。


続いて観たのも

録画していた『スペース・ロック』(2018年/監督:エリック・サラゴサ)を観る。宇宙基地を制圧したテロリストとの戦いを描いたSFアクションです。
世界中でテロを行っている組織ウルフパックのテロリスト6人が逮捕され、宇宙空間のステーションで尋問されます。組織の首領アルファの正体を捜すのが目的。査察のためにやってきた女医のストーン(ミシェル・ルヘイン)が人道主義のバカ女で、拷問がされていると疑って(実際に拷問されていたのだが)、一人でノコノコと囚人のアーガン(ヴァヒディン・プレリック)の独房に行き、人質になります。アーガンは仲間を解き放ち、宇宙ステーションを制圧。ストーンの護衛できたCIA捜査官ライザー(スコット・アドキンス)とシャトルパイロットのブリジェス(アーロン・マカスカー)がストーンを救出し、貨物室に立て籠もります。アーガンたちはスペースシャトルタグボートにして、宇宙ステーションをモスクワに墜とす計画を立てており……
狭い空間でチマチマした戦いが繰り広げられる低予算映画。凶悪な囚人を一人ずつ倒していくのに工夫がないうえに、アクションもぬるく退屈します。最初にでてくるデスメタル拷問だけが新味で面白かったで~す。

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どうでもいい作品だけど

録画していた『ジュラシック・ユニバース』(2018年/監督:ライアン・ベルガルト)を観る。死刑囚が生死をかけて恐竜と戦う劇場未公開のSFアクションです。
死刑の執行がテレビ放送される近未来、妻殺しの濡れ衣を着せられたアンソニー(アダム・ハンプトン)は死刑を免れて自由放免の権利を手に入れるために、ヴァーチャルリアリティの世界で恐竜相手に戦うテレビ番組に参加します。VRの世界ですが、恐竜に襲われた傷はリアルに反映し、ゲームの中で命を落とすと現実に死亡。3つのステージがあり、アンソニーを含めた10人の囚人たちは恐竜だけでなく仲間同士の殺しあいもあって次々に死んでいきます。そして、最後に生き残るのは……
この手のお話は、どれもこれも似たりよったりで、どうこう言うまでもないのですが、チーピーなCGの上に、ライアン・ベルガルトの演出はアクション場面のさばき方が手ぬるく、登場人物がいろいろ動いていても迫力がなく、面白味が感じられません。ラストで対決する一番の性悪が、可愛い子ちゃんのケイティ・バージェスというのが唯一の新味で~す。

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1年に1回だが

録画していたテレビ朝日スペシャルドラマ『必殺仕事人2019』(脚本:寺田敏雄、監督:石原興)を観る。
昨年の『必殺仕事人』に使われた市原悦子のナレーション(追悼なのか)から始まり、母のこうが亡くなって(こう役の野際陽子が亡くなり、ドラマでも死んだことにしたのね)落ち込んでいる妻ふく(中越典子)の身を案じる小五郎(東山紀之)は、同僚の住之江彦左衛門(松尾諭)の紹介で遺品整理のために物々交換の仲介をしている油問屋の手代・弥吉(伊藤健太郎)を家に呼びます。弥吉の許嫁・おたね(飯豊まりえ)の住む長屋が大商人・蘇我屋(近藤芳正)に命じられたヤクザ者に壊され、おたねの母も殺されたことから恨みをはらすために仕事人に依頼。お菊(和久井映見)が弥吉の頼みをきき、小五郎・涼次(松岡昌弘)・リュウ(知念侑李)・陣八郎(遠藤憲一)が蘇我屋とヤクザ一家を仕末します。しかし、蘇我屋の背後には老中(林家正蔵)と結託した上総屋(西田敏行)がおり、物々交換の仲介料で仕事人への頼み料を稼いだ弥吉を配下にすることを計画。言葉たくみに弥吉の後見人になり、弥吉は献残屋として独立します。弥吉を妬んで上総屋の言いなりになる番頭・金次郎(袴田吉彦)や、弥吉を好きになる将軍家遠縁の娘ほのか(松井玲奈)の存在で弥吉の人生の歯車が狂いはじめ……
必殺シーンが中盤とラストの2回ある構成は悪くないのですが、殺し方に今イチ工夫が足りません。老中をも操る西田敏行の悪役ぶりはグッド。野際陽子の代わりにこうの妹役でキムラ緑子が登場して小姑ぶりを見せるのですが、そろそろ“中村主水”パターンから変えた新しい小五郎像が見たいですな。例えば子どもができて、ふくの尻に敷かれ、育児におわれる現代的亭主像とかね。年1の作品なんですから、練りに練った内容に期待したいで~す。

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時代劇愛

録画していたNHKスペシャルドラマ『スローな武士にしてくれ』(作・演出:源孝志)を観る。
京映撮影所(完全に東映太秦撮影所)にNHKから時代劇で最新技術を使ったパイロット番組を作りたいという依頼がきます。所長(伊武雅刀)は、時代劇ベテラン監督の国重(石橋蓮司)に声をかけ、活動屋とよばれる絶滅危惧種の職人たちが集結。撮影技師の武藤(本田博太郎)、照明技師の町田(浜田晃)、録音技師の玉村(佐川満男)ね。大スターをよぶ金はないし、映像中心ということで、斬られ役専門の大部屋俳優シゲちゃん(内野聖陽)が主役に選ばれます。シゲちゃんは殺陣の名人なんですが、セリフになると極度に緊張して声が裏返るのが欠点。里見浩太朗との撮影では殺陣は完璧に決めたものの、たった一言「天誅~!」が裏返って使い物にならず、後日アフレコになる始末。福本清三も顔をみせており、里見浩太朗に見事斬られていました。
NHKから最新撮影機材を持ってやって来たDIT(デジタル・イメージ・テクニシャン)の田所(柄本佑)は時代劇オタクで、美術倉庫を見て狂喜乱舞。それを観ている私も狂喜乱舞。田所は新選組を題材とした時代劇を提案し、タイトルは「スローな武士にしてくれ」に決定。当然、BGMは「スローなブギにしてくれ」ね。
内野聖陽がカメラテストで水の入ったゴム枕を刀で斬るハイスピード撮影にはじまり、ドローンによる空陸一体カット、ハイスピードカメラによるワンカット13人斬り、そしてワイヤーアクションを使った池田屋階段落ちとチャンバラの面白さを満喫。内野聖陽だけでなく、中村獅童や斬られ役の面々が素晴らしい殺陣を披露してくれます。それに、内野聖陽の妻役の水野美紀が元くノ一女優ということで、余興で見せる立回りもグッド。これがラストのオチにもつながっています。ハイテク技術撮影の流れを描きながら、撮影所で働く人たちの姿も描いており、コミカルな人間模様に拍手。時代劇ファン必見の最高に面白い作品で~す。

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最後に

録画していた『やくざの墓場 くちなしの花』(1976年・東映/監督:深作欣二)を観る。やくざと義兄弟の盃を交わしたマル暴刑事の破滅の物語です。
地元の西田組と全国規模の巨大組織・山城組の傘下団体が対立している大阪南部で、警察本部捜査4課刑事の黒岩(渡哲也)は些細なことで西田組のチンピラをパクります。地元警察署長(金子信雄)の仲介で和解した黒岩は、西田組の若頭代行の松永啓子(梶芽衣子)と親しくなりますが、組長代行の岩田(梅宮辰夫)とは対立。黒岩は規律を重んじる警察本部長(大島渚)や副本部長(成田三樹夫)など警察上層部に睨まれます。山城組対西田組の抗争は日増に激化し、いつしか黒岩は啓子に手を貸し、戦いに不利な西田組に加担。岩田とも親交を深めることになり黒岩は兄弟盃を結びます。しかし、そのことは警察本部に知られ、黒岩は自宅謹慎。山城組傘下の組員が金融ブローカーの山光総業の事務所へ逃げ込むのを目撃した黒岩は、山光総業が山城組の財源を握っていることをつかみます。山光総業の社長・寺光(佐藤慶)は警察本部のOBで、退職した警官を社員として採用していることから警察の情報は寺光に筒抜け。山光総業と癒着している警察本部は山城組には手をつけず、西田組の組長(藤岡琢也)を逮捕し、解散をせまったことから岩田が山城組の組長(吉田義夫)の命を狙い……
バックに流れる「くちなしの花」のメロディはハードな内容にそぐわない感じがします。主人公の黒岩は満州生まれで疎外されて育ち、啓子は朝鮮人とのハーフ、岩田は在日朝鮮人という設定。警察権力の悪を描いているだけでなく、日本社会の差別問題も描いているんですね。悲哀感を漂わせるラストはグッド。暗い作品ですが、梶芽衣子の良さもでており、私にとってある種の心地よさがある作品で~す。

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昨日に続き

録画していた『県警対組織暴力』(1975年・東映/監督:深作欣二)を観る。地方警察の腐敗と、マル暴刑事とヤクザの癒着ぶりを描いた実録路線です。
倉島署のマル暴刑事・久能(菅原文太)は、ヤクザと対峙するには自らもヤクザの分を知らなくてはいけないと考えている出世の見込みのない叩き上げ刑事で、大原組の若衆頭・広谷(松方弘樹)の気性を気に入り二人は固い絆で結ばれています。大原組は石油会社と結託した川手組と対立しており、倉島地区の暴力取締りに県警本部からエリート警部補・海田(梅宮辰夫)が着任。抗争を終結させるために、海田は大原組の解散をもくろみ……
海田は政治家(金子信雄)と癒着しているヤクザ(成田三樹夫)を相手にするより、暴力丸出しの地元ヤクザをつぶす方が手っ取り早いと考えているんですな。法に厳正・組織に忠実・ヤクザとの私的関係を否定する海田の言い分は真っ当なんですが、自分より強い相手(政治家や企業)には手を出さないだけです。久能はそんな海田に反発しますが、地元ヤクザとの癒着を糾弾され自宅待機。大原組の親分(遠藤辰夫)は海田に脅されて組を解散。広谷や自暴自棄になって大暴れし、久能が射殺します。
善良な人物はひとりも登場しない、善悪の概念を越えた作品。警察権力の腐敗というより、石油会社に天下りして、能天気にラジオ体操をする梅宮くんに面白味を感じましたね。現在でも通じるエリート官僚の姿で~す。

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