根底にあるのは恨

韓国時代劇『不滅の恋人(全20回)』を観了。病弱な国王が死に、国王の弟(次男)のイ・ガン(チュ・サンウク)が、伯父のヤンアン大君(ソン・ビョンホ)と結託して後継者の幼い甥から国王の座を奪います。兄イ・ガンと伯父ヤンアン大君によって流罪にされたイ・フィ(ユン・シユン)は殺されたと見せかけて都に戻り、幽閉されていた幼い甥を救出。策略によってイ・ガンとヤンアン大君を仲違いさせ、終にはヤンアン大君を死に追いやります。味方を増やし、宮殿に乗りこんでイ・ガンと対決。幼い甥は国王に復位し、イ・フィに片想いしていた女は都合よく死に、イ・フィは恋人チャヒョン(チン・セヨン)と結ばれてメデタシ、メデタシです。
幼い頃に病弱な長男の王位継承をおびやかさないように宮廷を出され、家族と離れて育ったイ・ガンは宮中で苦労なく育ったイ・フィと宮廷に恨みの感情があるんですね。それで王になって恨みをはらそうと思うわけね。ヤンアン大君は、長男だったのに素行が悪くて王になれず、次男が王位を継いだことに恨みがあります。ヤンアン大君は長子継承を唱える宮廷に対してイ・ガンを使って宮廷に恨みをはらそうとする、二人の野望は権力欲よりも恨みからくるものなんです。“恨”の精神を織り込まないと韓国ドラマは成立しないようで、国民性ですな。
現在、日韓関係が悪化していますが、元は徴用工補償問題で韓国が国家間の約束を破ったことに端を発したのですが、『不滅の恋人』でイ・ガンが女真族との約束を破るところがあります。女真族の怒りを抑えるために、イ・フィは実利的な代替案を出して解決。韓国政府がイ・フィのように真摯な態度で解決にむけて事にあたればよかったものを、イ・ガンの態度じゃねえ。悪くなったのは相手のせいにするだけなのも同じで、輸出管理強化によって韓国経済がひどくなるのは間違いなく、韓国政府は日本が全て悪いといって抜本的な解決から逃げるような気がしま~す。

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CDを聴きながら

日曜日は録画予約のため、今週のテレビ番組チェックの日。先週紹介した『無宿(むしゅく)』の元ネタとなった『冒険者たち』がBSプレミアムで18日(木)に放映されます。『冒険者たち』については、ここへ⇒https://nostalji.hatenablog.com/entry/20140214
BS日テレで放送しているテレビ時代劇『闇を斬る!大江戸犯科帳』が17日(水)に最終回を迎えます。日テレ系列で1993年3月9日~12月21日に放送されたもので、大目付の一色由良之助(里見浩太朗)が闇奉行となって法で裁けぬ大悪党を成敗するというもの。未見だったので最初のうちは観ていたのですが、毎度同じパターンで観たり観なかったり。最終回は観ることにしましょう。最近の時代劇と比べると殺陣はいいですが、当時としては平凡。里見浩太朗も齢のせいか動きが今イチです。

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高倉健の歌を集めた私家盤CDを聴きながらのチェック。健さんの歌はお世辞にも上手いとはいえませんが雰囲気があるんですよ。健さんの代表曲といえば「網走番外地」。作曲者は不詳で、受刑者たちが無聊を慰めるために、戦前から歌い継がれてきたものです。♪~春に、春に追われし、花も散る、酒(きす)ひけ、酒ひけ、酒暮れて~の歌詞のうち、「酒(きす)ひけ」が香具師の隠語であったために放送禁止歌になりました。LPやCDに収録に際して再録されたものは、歌詞が変更。二つのバージョンを聴けるのが私家盤の良いところ。
画像は、「時代遅れの酒場」のレコードジャケット。B面で健さんが「時代遅れの酒場」のメロディに合わせて自作の詩を朗読しているんですが、このようなのを収録するのも私家盤CDの楽しさで~す。


時代劇から

BSプレミアムの『大富豪同心(全10回)』の最終回を観る。三国屋を乗とって江戸の財界を支配しようと大阪から乗り込んできた天満屋柴俊夫)は、企ての邪魔になる剣豪同心として評判の卯之吉(中村隼人)への刺客として吉兵衛(宮川一朗太)を差し向けます。前話で身代わりになっていた役者の由利乃丞を卯之吉と間違え罠をしかけますが、卯之吉は吉兵衛の正体を見破り……
卯之吉の両親の死の真実や宿敵・天満屋との関係が明らかになり、美鈴(新川優愛)との恋が進展。最終回にふさわしいエピソードでした。現実離れした設定の物語なので、出演者の演技は過剰気味。小説だと作家の筆力で違和感なく読ませるのでしょうが、映像だと戦いで気絶する主人公を敵方がどのように誤解するかなど、表現において難しいところがありますな。リアルな時代劇もいいですが、このようなユーモア時代劇も楽しいで~す。

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BS-TBSで放送している武田鉄矢の『水戸黄門』も、大詰めに近づいてきました。九州へ旅立った黄門一行に、熊本藩主の娘・吉姫(吉本美優)が同行し、中津→朝倉→日田→延岡→宮崎→鹿児島→長崎と周って、今夜は佐賀。大雑把な物語展開ですが、ないものねだりしても仕方ないですからね。きっちり約束事を守る安心感だけが取り柄です。斬られ役の東映剣会の人たちも齢をとってきましたなァ。福本清三さんは、通行人役などで顔を見せるだけ。チャンバラ時代劇の製作が難しいのがわかりま~す。

海外ドラマから

CATV(FOX)の海外ドラマ『NCIS:LA』のシーズン10(初回)を観る。前シーズン最終話は、中米犯罪組織からモーズリー副局長(ニア・ロング)の息子を奪還するのですが、脱出しようとしていたカレン(クリス・オドネル)・サム(LL・クール・J)・ケンジー(ダニエラ・ルーラ)・ディークス(エリック・クリスチャン・オルセン)の乗った車がロケット弾を受け炎上したところで続きでしたな。全員負傷するものの、車から脱出していました。シーズン最終話で絶対的危機におちいり次シーズンへ続くのが特徴ですが、危機脱出は毎度適当です。犯罪組織の追跡をかわしながら逃げのびるエピソードで、別行動をしていたモーズリーが、元夫である犯罪組織のボスを殺して解決。行方不明になっていたヒドコ(アンドレア・ボルドー)は結局死んでおり、シーズン10はお役御免です。モーズリー副局長も私的な行動ということで副局長を解任されそうで、メンバー交代がありそうです。

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他に観ている海外ドラマは、日テレの『レジェンド・オブ・トゥモロー』、WOWOWの『ブラインドスポット(シーズン4)』、CATV(スーパー!ドラマTV)の『ブラックリスト(シーズン6)』の3本。最近の海外ドラマの特徴としてシーズンを前後にわけて、真ん中にひとつの山場を持ってくるようにしています。『ブラインドスポット』は、記憶を消す薬の副作用で死に向かっていた主人公ジェーンが治療薬を探すサブストーリーが前半で解決。『ブラックリスト』は、主人公のレッドの刑務所生活がサブストーリーとしてあり、死刑が宣告されて如何にして逃れるかが前半の山場です。ちょうど放送中ね。
日本で海外ドラマの放送開始されたのが1956年で、私が最初に観た海外ドラマは『ハイウェイ・パトロール』。懐古趣味にアップするため、ユーチューブで『ハイウェイ・パトロール』を観たのですが、デビュー間もない頃のクリント・イーストウッドが出演していました。『ハイウェイ・パトロール』については、ここへ⇒https://88231948.at.webry.info/201907/article_3.html

二大レジェンドスター競演

録画していた『無宿(やどなし)』(1974年/監督:斎藤耕一)を観る。勝新太郎高倉健が共演した話題作です。
昭和の初め、穴吹錠吉(高倉健)と駒形玄造(勝新太郎)が出所します。駒玄は愛人・坂東梅之丞(藤間紫)率いる芝居小屋に戻り、錠吉は殺された兄貴分の女房を女郎屋へ訪ねますが既に死亡。女郎のサキエ(梶芽衣子)は、彼女の死因は自殺で、自分もああなりたくないので足抜けしたいと錠吉に懇願します。丁度、遊びに来ていた駒玄の助けをかりて足抜きに成功。錠吉が元潜水夫だったことを知った駒玄は、山陰沖に沈んでいるバルチック艦隊の金塊引き上げの話を持ちかけます。錠吉は兄貴分を殺した男・仙蔵(安藤昇)を追っており、二人の前から姿を消します。駒玄とサキエが金塊探しに苦労している時、仙蔵と仙蔵に殺しを依頼した大場親分(大滝秀治)を殺した錠吉が二人の前に現れ……
着流し姿の健さんと、白い麻の背広にカンカン帽の勝新という異色な二人が奇妙な友情に結ばれ、それまでの役柄とは全く異なる梶芽衣子が加わって宝探しをするという日本版『冒険者たち』を想定した勝プロの作品です。フランス映画的雰囲気ということで、その作風から日本のクロード・ルルーシュと称されていた斎藤耕一がメガホンをとるのですが、映像的には優れたものがあります。だけど、健さん勝新がその映像にマッチしていないんですよ。個性が強すぎるんですな。梶芽衣子だけは映像に溶け込んでいましたけどね。残念ながら、作品としては失敗作だと思いま~す。

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豪華なセット

録画保存していた時代劇『妖刀物語 花の吉原百人斬り』(1960年/監督:内田吐夢)を観る。歌舞伎の『籠釣瓶花街酔醒』を脚色した内田監督古典芸能4部作の一つです。
絹織物商人の佐野次郎左衛門(片岡千恵蔵)は、皆から慕われる真面目な人物ですが、顔に醜い痣があるため嫁の来てがありません。越後屋(原健策)の勧めで見合いをするものの相手に断られる始末。越後屋に誘われて吉原に行きますが、花魁は誰も気味悪がって近づかず、岡場所あがりの遊女・玉鶴(水谷良重)が次郎左衛門の相手をします。玉鶴にメロメロになった次郎左衛門は、太夫の位に憧れる玉鶴のために妓楼の主人夫婦(三島雅夫沢村貞子)の言うがままに散財。八ツ橋太夫になった玉鶴を身請けする約束を取り交わしますが、信州一円に雹が降り、桑の木が壊滅して商売が破綻します。守り刀の名刀・籠釣瓶(籠で作った釣瓶のように水も溜まらぬ切れ味)を処分して金を工面しようとしますが、徳川家に祟りのある妖刀・村正だったために買い手がつきません。玉鶴の八ツ橋太夫襲名花魁道中を見た次郎左衛門は、魅入られたように行列に斬りかかり……
歌舞伎では八ツ橋太夫の花魁道中を見た次郎左衛門が一目惚れして八ツ橋のもとへ通いつめ、かなわぬ恋の果ての狂乱ですが、本作では遊女に育った女の欲と、愛にめぐまれなかった男の悲劇にしています。岡場所あがりと馬鹿にする同僚を見返すために太夫の位欲しさに次郎左衛門を利用し、邪魔になる情夫(木村功)とも情け容赦なく手切れするふてぶてしい女を水谷良重が好演。彼女の初期の代表作というのが納得です。東映全盛時の作品とあって、テレビ時代劇のせせこましい吉原のセットと異なり、豪華絢爛。セットや衣装を見るだけで目の保養。内田吐夢の演出は、華やかさと暗さを重ねて描き、重厚な作品に仕上げていま~す。

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リアリズム時代劇

録画保存していた『血槍富士』(1955年/監督:内田吐夢)を観る。中国抑留から帰還した内田吐夢の第1回作品です。
仲間稼業の権八片岡千恵蔵)は、酒匂小十郎(片岡栄次郎)と槍持ちをして小者の源太(加東大介)と共に、東海道を江戸に向かっています。槍持ちに憧れる浮浪児の次郎(植木基晴)が権八にくっついて歩き、一行は袋井宿へ。彼らの他にも、権八や次郎と親しくなる旅芸人の母娘(喜多川千鶴と植木千恵)、身売りする娘(田代百合子)と父親、大泥棒を追っている岡引き(加賀邦男)、大金を持っている男(月形龍之介)、謎の商人(進藤英太郎)などが旅しています。大井川が川止めになったことから同じ宿に逗留することになり……
富士山の見える東海道の道筋や、松並木に草ぶきの屋根の家といった、かつての時代劇ではお馴染みの情景が情感豊かに描かれ、グランド・ホテル形式で旅する人々の人生模様が語られます。小十郎は優しい心を持っているのですが酒癖の悪いのが玉に瑕。本人もそれを自覚しているのですが、酒屋で隣席にいる5人の侍の無礼をとがめたことから争いになり、小十郎と源太は無惨な最期を遂げます。槍を持って駆けつけた権八は5人の侍と対決。権八は槍の名人ではありません。怒りにまかせて槍をブンブン振り回して迫ってくる権八の気魄に侍たちはたじろぎ、一人また一人と倒されていきます。突いた酒樽から流れ出た酒が地面を濡らし、泥だらけになって戦う死闘。東映の特徴である様式美に満ちた殺陣でなく、リアルな殺陣は圧巻で~す。

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