原作期待で

録画していた『ゲノムハザード ある天才科学者の5日間』(2014年/監督:キム・ソンス)を観る。何者かの陰謀によって記憶を操作された主人公が真相を求めて戦いに身を投じるサスペンスアクションです。

韓国にも行ったことのない石神(西島秀俊)は、急に韓国語がわかるようになり、帰宅すると蝋燭だけが灯された暗い部屋で妻の死体を発見。直後の電話で妻・美由紀(真木よう子)の声を聞きます。その時、警察を語る2人組の男が現れ、石神は逃走。来日中の韓国人記者ジウォン(キム・ヒョジン)に助けられ、部屋に戻ってみると死体が消えています。電話で実家にいると話した妻に会いに行くと、そこにいたのは見知らぬ家族。やがて石神は、自分の記憶が不確かなものになっていくのに気づきます。石神を夫のオ・ジヌだというハン・ユリ(中村ゆり)が記憶の中に現れ……

司城志朗のベストセラー小説を日韓合作で映画化。原作は読んでいませんが良質のミステリーだということがわかります。主人公はオ・ジヌの記憶に石神の記憶が上書きされていて、上書き部分が徐々に消えていく状態にあるんですな。何故そんなことになったのかを解明していくわけね。メリハリがなくて一本調子の演出という難はあるものの、謎解きアクションとして楽しめま~す。

 

週に一度は西部劇

録画していたBSシネマの西部劇『リオ・グランデの砦』(1950年/監督:ジョン・フォード)を再見。朝鮮戦争アメリカ軍が38度線を越えて北朝鮮に進軍した時期と符合するので、いかにもタカ派のフォード作品と云われたこともありましたが、そんなことは抜きに楽しめる作品です。

主人公のヨーク中佐(ジョン・ウェイン)はリオ・グランデの砦の司令官。蜂起したアパッチ族討伐に出撃しても彼らはメキシコに逃げてしまうので苦慮しています。ヨークには15年間別居中の妻キャサリンモーリン・オハラ)と息子ジェフ(クロード・ジャーマン・ジュニア)がいて、ジェフが一騎兵として砦に赴任。キャサリンもジェフの後を追って砦にやってきます。砦の女・子供を避難させる幌馬車がアパッチに襲撃され、子供が乗った馬車が拉致されてメキシコへ。シェリダン将軍(J・キャロル・ナイシュ)から内諾を得たヨークは部隊を率いてメキシコへ突入しアパッチの本拠を攻撃して子供たちを救出します。

騎兵隊とアパッチのアクションシーンは素晴らしく、特にアパッチが幌馬車を襲撃するシーンはキレキレで、最近のCGアクションでは味わえない迫力。ベン・ジョンスン、ハリー・ケリー・ジュニア、ビクター・マクラグレン、チル・ウィルスなど多彩に描かれた人物の面白さ。息子のクロード・ジャーマン・ジュニアと妻のモーリン・オハラへみせるジョン・ウェインの武骨な愛情表現が実にグッドで、ウェインの魅力満点。超A級の娯楽作品といえま~す。

 

聴いてから観るか

『リオ・グランデの砦』のサントラCDを聴く。「メインタイトル」に始まり、エンドで流れる「デキシー」まで23曲収録されています。

ビクター・ヤングが音楽を担当しており、フルオーケストラによるメインテーマ(編曲されて色々なシーンで使われる)は、それまでの民謡を活用するフォード西部劇の音楽とは異なった趣きがあります。インディアンが出てくるシーンに流れる“アパッチのテーマ”ともいうべき3曲も勇壮でグッド。ビクター・ヤングの曲ではありませんが、挿入歌として「マイガール・イズ・パープル」「フートソア・キャバリー」「イエロー・ストライプス」「キャトル・コール」「エリー・キャナル」「アイル・テイク・ユー・ホーム・アゲイン・キャサリン」「ダウンバイ・ザ・グレンサイド」「ユーア・インザ・アーミー・ナウ」を騎兵隊員として出演していたサンズ・オブ・パイオニアーズ(リードボーカルはケン・カーティス)が歌っており、「アー・サンアントン」をベン・ジョンスンとハリー・ケリー・ジュニアが歌っています。どのシーンで歌っていたか、はっきり憶えておらず、録画しているので再見予定。

ちなみに、ライナーノートはハリー・ケリー・ジュニアへのインタビューを使っていま~す。

 

現代西部劇として

ブックオフでゲットしたDVD『レッドヒル』(2010年/監督:パトリック・ヒューズ)を観る。オーストラリアの田舎町を舞台にした、新任警官が脱獄犯と対決するアクション映画です。

警官のシェーン(ライアン・クワンテン)は妻の妊娠を気遣って田舎町の警察へ転任してきます。着任早々、その町で殺人事件を起こしたという犯人ジミー(トム・E・ルイス)が刑務所を脱獄。署長のビルはジミーが復讐のために町に戻って来ると考え、警官だけでなく自警団も組織して警戒。シェーンが職務質問で老夫婦のトラックを停めると、ジミーが乗っており、互いにライフルを構えますが、人質のことを考えライフルを下に置きます。迫ってくるジミーに後ずさりしたシェーンは崖下に転落。ジミーは警官や自警団を次々に殺していきます。シェーンはジミーが自分を殺さなかったことに疑問を持ち……

レッドヒルは荒野の田舎町で、車だけでなく馬も重要な移動手段。ジミーは先住民アボリジニで、荒野での戦い方を熟知。オーストラリア映画ですが、西部劇と同じ構造を持っています。ジミーの復讐動機もね。主人公が何もしないうちに真相が判明して、ジミーとの友情も中途半端なままなので、作品としては今イチですな。黒豹の存在もジミーを象徴させるためのものと思われるのですが、残念ながら意味不明。現代西部劇として雰囲気だけは楽しめる作品で~す。

 

少し古いが

録画していた『リボルバー』(2005年/監督:ガイ・リッチー)を観る。リュック・ベッソンが製作したサスペンス映画です。

カジノ王マカ(レイ・リオッタ)によって7年間投獄されたジェイク(ジェイソン・ステイサム)は、刑務所内であらゆるペテンの技術を学んで出所します。復讐のためにジェイクはマカのカジノで大金を巻き上げることに成功。さらなる復讐を恐れたマカは、凄腕の殺し屋ソーター(マーク・ストロング)を雇ってジェイクを殺そうとしますが……

回想と実像と妄想が混在していて、何が何やらわからない作品。ソーターに襲われた時に現れた2人の謎の人物ザック(ヴィンセント・パストーレ)とアヴィ(アンドレ・ベンジャミン)が刑務所で究極の勝利の方程式たるペテンのやり方を教わった“チェスの天才”と“ペテンの達人”と思われるのですが、現実なのか妄想なのかはっきりしないんですよ。復讐そのものも夢想の世界と思われたりしてね。ガイ・リッチーの自己満足作品という評価に納得です。髪のあるジェイソン・ステイサムを見ただけで満足としましょう。

 

監督興味で

録画していた『ゴースト・ドッグ』(1999年/監督:ジム・ジャームッシュ)を観る。殺し屋が恩人のマフィアの幹部の依頼を受けたことでマフィアとの戦いに巻き込まれる異色アクションです。

殺し屋ゴースト・ドッグフォレスト・ウィテカー)は、かつて命を救ってくれた恩人であるマフィアの幹部ルーイ(ジョン・トーメイ)から依頼を受け、ファミリーのボス(ヘンリー・シルヴァ)の愛娘ルイーズ(トリシア・ヴェッセイ)に手を出した部下の暗殺をします。殺人現場にルイーズがいたことからボスはゴースト・ドッグを殺すように部下たち全員に命令。ゴースト・ドッグは反撃に出て……

ジム・ジャームッシュ独特の味わいある作品です。主人公の愛読書が「葉隠」で、日本古来の武士合精神に従って生きる孤独な殺し屋というのがユニーク。随所にシニカルなユーモアを散りばめ、主人公の死生観を描いています。好みが分かれる作品ですが、私は好きで~す。

 

韓国時代劇なので

録画していた『王の願い ハングルの始まり』(2019年/監督:チョ・チョルヒョン)を観る。朝鮮王朝の中で最も名君と云われる世宗が、ハングルを完成するまでを描いた歴史時代劇です。

朝鮮第4代国王・世宗(ソン・ガンホ)は、自国語を書き表す文字が漢字で、読み書きが上流階級層の特権になっていることを憂慮し、誰もが読み書きできる独自の文字の必要性を感じていました。昭憲王后(チョン・ミソン)の助言で、何カ国もの言語に精通している仏僧シンミ(パク・ヘイル)に協力を要請。仏教弾圧で苦い想いを味わったシンミでしたが、王の理想に共感します。シンミとその弟子、王の息子の首陽大君・安平大君が中心となって文字の開発を始めますが……

韓国時代劇ではお馴染みの女優チョン・ミソンの遺作となった作品。自殺と云われていますが、韓国芸能界でなにがあったのか、闇ですなァ。この作品では、王に決断をうながし、王からも愛されている重要な役どころ。シンミは実在の人物ですが、ハングル創製に関わったかどうかは疑問。クレジットでフィクションとことわっているのはその為でしょう。

世宗によって、朝鮮語には漢字とハングルの2種類の文字ができたのですが、日本のように漢字と平仮名を併せて使うようなことはせず、現在はハングルだけというのは実利よりもナショナリズムが強いせいですかねェ。