懐かしの東映ギャング映画

友人に送ってもらった『東京ギャング対香港ギャング』(1964年・東映/監督:石井輝男)を観る。麻薬の取引をめぐって東京ギャングと香港ギャングが対決するアクション映画です。

大岡(安部徹)興業の北原(高倉健)は麻薬取引のために香港にやってきます。しかし香港ギャング・竜(石山健二郎)は条件をつり上げ交渉は決裂。マカオの毛(丹波哲郎)の配下チャン(内田良平)が北原に取引を持ちかけ、北原はそれに応じます。竜の腹心・チャーリー(大木実)がそのことを知り、竜一味が北原を狙撃。チャンとの取引は成功するものの、北原は来日する京劇スター・李淑華(三田佳子)に麻薬を預けて死にます。香港にやってきた大岡興業の幹部・藤島(鶴田浩二)は北原が竜に殺されたことを知り、毛に会いにマカオへ。毛が藤島の戦友だったことがわかります。一方、竜は麻薬を奪うために日本へ。大岡は李淑華からの麻薬の受け取りに成功しますが、裏切者(八名信夫)がいて運送中に竜一味に麻薬を横取りされ……

香港が舞台の健さんが殺されるまでの前半と、鶴田と丹波が東京ギャングと香港ギャングを共倒れさせる後半の二段構成になっています。ハンディカメラのなかった時代に、香港の裏町でロケをしており、臨場感あふれる画面に満足、満足です。内容的には観光映画にしなかった前半部分が優れており、後半は派手な銃撃戦はあるものの、内容はムチャクチャ。鶴田が出てくると、どうしても湿っぽくなり、渇いた石井ワールドに鶴田は不要で~す。

 

B西部劇二本立て

西部劇パーフェクトコレクションの『正義のカウボーイ』と『平原の嵐』を観る。B西部劇二本立てで、これで最後です。

『正義のカウボーイ』(1947年/監督:ウィリアム・バーク)は、町中の土地を支配しようとする悪党と戦うカウボーイの物語。

投資事業を行うために3万ドル持った銀行家スタントンが乗っている駅馬車を襲撃する二人組を、幌馬車の護衛をしていたボブ(ジェームズ・ウォーレン)と相棒のチート(ジョン・ロレンツ)が追い払います。二人組は町を支配するカーター(レイモンド・バー)の手下で、カーターは鉄道がくることを知っていて牧場主の土地を買い占めており、スタントンが牧場主に投資することを恐れていたのね。ボブの牧場も狙われていましたが、スタントンの融資を受け……

後年、『ペリー・メイスン』や『鬼警部アイアンサイド』で真実を追求する正義漢を演ずるレイモンド・バーが若き悪党役。汚れ仕事は自分で手をくださず、部下にやらせるという悪知恵の知能犯。ゼーン・グレイの原作をテンポよく展開し、悪党にも魅力があったので、それなりに楽しめました。

 

『平原の嵐』(1950年/監督:レスリー・セランダー)は、羊飼いと牛飼いの紛争に巻き込まれたカウボーイの物語。

デイブ(ティム・ホルト)と相棒のチート(リチャード・マーティン)は、仕事を求めてサンダウンの町へ行く途中で羊飼いたちにリンチされそうになっていたドーソン(ケネス・マクドナルド)牧場のカウボーイを救出。ドーソンはマーヴィン牧羊場の牧羊頭ローリンズ(ビル・ケネディ)に狙われますが、デイブたちが助けます。ローリンズは女主人(ノリーン・ナッシュ)の目を盗んで羊を売っており、羊が盗まれたことにしてドーソン牧場と紛争をおこそうとしていたんですな。デイブはローリンズの企みに気づき……

主演のティム・ホルトは、ジョン・フォードの『駅馬車』(騎兵隊将校役)や『荒野の決闘』(ヴァージル・アープ役)に出演していますが、数多くのB西部劇に主演したB西部劇スターといえます。1941年~43年まで、ウエスタン・マネーメイカーのトップ10に名を連ねています。メキシコ人の相棒(名前もチート)がいて、相棒には結婚を迫る彼女がいるというのは『正義のカウボーイ』と同じ設定。酒場では歌と踊りのショーがあるというのも同じね。テレビが普及するまではB西部劇がめったやたらと製作されていたので似たような作品が多いで~す。

ワースト西部劇

西部劇パーフェクトコレクションの『ネブラスカの砦』(1953年/監督:フレッド・F・シアーズ)を観る。ネブラスカの荒野を舞台に騎兵隊スカウトの活躍を描いた物語。

騎兵隊スカウトのハーパー(フィル・キャリー)は、スー族の酋長を殺したとされるウイングフット(モーリス・ハラ)を砦に連行します。新しく酋長になったスポッテッドベア(ジェイ・シルバーヒールズ)はウイングフットの引き渡しを要求。ウイングフットは無実を主張し、砦の司令官(レジス・トゥーミー)は砦で裁判をかけると言って拒絶。しかし、ウイングフットは囚人兵のリノ(リー・ヴァン・クリーフ)と脱走し、ハーパーが追跡します。スー族の襲撃から逃れたエリオット夫妻を襲おうとしているリノをハーパーが捕え、彼らはマクブライト(ウォレス・フォード)の交易所に立ち寄りますが、スポッテッドベア率いるスー族の一団に囲まれ……

エリオット(リチャード・ウェッブ)の妻パリス(ロベルタ・ヘインズ)がハーパーの昔の恋人だったことからくる内紛、何度も縄抜けをして失敗するリノ、同じパターンで攻撃してくるインディアン、ダラダラした演出で緊迫感がありません。3D映画のようで、それらしいカットが唐突に出てきます。とってつけたようなラストといい、何じゃコリャ、最低西部劇で~す。

 

未見だったというだけ

西部劇パーフェクトコレクションの『決闘の黒幕』(1953年/監督:ウィリアム・ボーダイン)を観る。クォーターホースの調教とレースにかける少年の物語。

野生馬を調教していた父親が落馬して死に、牧場を奪われた若者ビル(チャック・コートニー)は、叔父の助けを求めてきた町で決闘に巻き込まれて負傷します。賭博師のマット(ドナルド・ウッズ)が決闘で倒した相手がビルの叔父で、ビルは叔父の銃弾をうけたのです。ビルはマットの妻ケイト(カレン・モーリー)の介護で完治。マットはビルをグラント(ランド・ブルックス)に預け、西部で最速のクォーターホース“ブルーチップ”の調教を任せます。ケイトに乱暴しようとしたローパー(グレン・ストレンジ)を空の拳銃で脅して撃退したことからビルはローパーに狙われ、グラントの隣人マーシャル(レイフ・エリクソン)の牧場にブルーチップと一緒に避難。ビルは、「ブルーチップは私の馬」と言ってきたマーシャルの姪ジェリー(ドロレス・プレスト)と喧嘩しながらも仲良くなります。ブルーチップは元々マーシャルの持ち馬で、ビルの叔父が調教していたんですな。ギャンブルに勝ったマットがマーシャルから取り上げ、ブルーチップをめぐってマットと叔父が決闘になったことがわかります。ブルーチップはレースの本命馬でしたがマットは対抗馬に金を賭けており……

マットが悪い奴で、酒場女と浮気してケイトに暴力をふるったり、グラントとローパーを使って駅馬車強盗をしたりと悪事の黒幕。ブルーチップを速く走れないようにするんですが、そんな障害をものともせず、ビルとブルーチップは優勝します。かつてはケイトとマーシャルが恋人同士という関係が絡むというゴタゴタした物語。モタモタした演出で歯切れが悪く、役者にも魅力がなく、退屈な作品で~す。

 

西部劇コメディといっても

西部劇パーフェクトコレクションの『腰抜け千両役者』(1950年/監督:ジョージ・マーシャル)を観る。英国の執事になりすましたヘボ役者が西部で英国流の行儀作法を教えようとする喜劇映画。

1900年代の初め、ニューメキシコの成金奥様(リー・ベンマン)が娘アガサ(ルシル・ポール)に淑女教育をほどこすためロンドンにやってきます。お金目当ての偽伯爵がアガサに目をつけ、役者のハンフリー(ボブ・ホープ)を雇って執事に仕立て、邸宅を借り受けて母娘を招待。奥様は偽伯爵より執事のハンフリーが気に入り、西部の田舎者に英国流の行儀作法を知らしめるためにハンフリーを連れて帰ります。アガサの父マイク(ジャック・カークウッド)は娘が伯爵と結婚するものと勘違いしたため、ハンフリーは英国伯爵と間違われて町は大騒動。アガサに恋している乱暴者のカート(ブルース・キャボット)はハンフリーを狙いますがうまくいきません。旅行中のルーズベルト大統領が町にやってくることになり……

ボブ・ホープが主演で舞台が西部となると、どうしても『腰抜け二挺拳銃』を思いうかべてしまいますが、残念ながら西部劇のパロディは殆どなく、英国文化のパロディが中心。内容も『腰抜け二挺拳銃』や『腰抜け二挺拳銃の息子』より格段に落ちる出来ばえ。ホープはさかんにジョークを連発するのですが、期待したほど面白くありません。アクション満載のキツネ狩りの場面が犬たちの好演もあって何とか愉しめる程度。相手役のルシル・ポールがテレビの『アイ・ラブ・ルーシー』や『ルーシー・ショー』で見せたようなアクの強さがなく、思ったほど可笑しくなくて失望しました。

 

シンギング・カウボーイ

西部劇パーフェクトコレクションの『ネバダの春』と『追撃の銃弾』を観る。シンギング・カウボーイ二本立てです。

ネバダの春』(1947年/監督:ウィリアム・ウィットニー)は、密猟者と戦うロイ・ロジャースの物語。

レイジー牧場に馬を届ける途中でロイ・ロジャースは小鹿を見つけ、野生動物を保護しているフォスター(ハリー・チェシャー)に預けます。親鹿は密猟者に殺されており、フォスターは密猟者の横行を危惧。密猟現場を見つけたロイは、ロイの恋人タフィ(ジェーン・フレイジー)の弟バート(ハロルド・ロンドン)が密猟一味にいることを知ります。バートはレイジー牧場のジーン(ステファニー・バチェラー)に恋しており、ジーンに利用されていたのね。密猟現場を見つけたフォスターをジーンの手下(ロイ・バークロフト)が殺害。友だちのクッキー(アンディ・ディバイン)からレイジー牧場に巨大な冷凍庫があることを知らされたロイは牧場に乗り込みますが……

『追撃の銃弾』(1936年/監督:ジョセフ・ケイン)は、牛の疫病であるテキサス熱蔓延防止のために戦うジーン・オートリーの物語。

テキサス熱が蔓延している州から、鉄道駅のある州に牛を運ぼうとするカウボーイたちを妨げようとしている娘(ドロシー・ディックス)を通りがかったジーン・オートリーと仲間のスマイリー・バーネットが助けます。テキサス熱で安く牛を仕入れたモーガン(J・R・マクゴーワン)は、通行を禁止している保安官を襲撃。選挙に出馬して保安官となったジーンは……

歌いながら旅をし、食事や団らんの時も歌い、必ずショーのシーンがあり、コメディリリーフ(前者ではアンディ・ディバイン、後者ではスマイリー・バーネット)が笑いをとるという典型的なシンギング・カウボーイ。悪党が相手でも撃ち殺すことはありませんが、今回の両作品はアクションシーンが多く、銃撃戦や追跡シーンは派手なものになっていま~す。

 

実録ものだが

西部劇パーフェクトコレクションの『復讐の六拳銃』(1941年/監督:レイ・エンライト)を観る。実在のアウトロー、ヤンガー兄弟の物語です。

南北戦争が終わり、コール(デニス・モーガン)・ボブ(ウェイン・モリス)・ジム(アーサー・ケネディ)のヤンガー兄弟は故郷のミズーリに帰って来ますが、悪徳銀行家のメリック(ビクター・ジョリー)が税金の払えない農夫たちから差し押さえという形で土地を奪っています。メリック配下のビルソン(ハワード・ダ・シルバ)は、メリックのやり方に抵抗している兄弟の父(ラッセル・シンプソン)を殺害。兄弟に保安官殺しの濡れ衣を着せ、保安官となって兄弟を追跡。兄弟はメリックの金を運ぶペティボーン(ウォルター・キャトレット)を駅馬車や鉄道で襲い、奪った金を税金の払えない農夫に施します。ジェシー・ジェームス(アラン・バクスター)と一緒に強盗稼業をしていましたが、ジムの恋人メアリー(ジェーン・ワイマン)が兄弟の一味ということでビルソンに逮捕され……

物語は殆どフィクション。仕方なく無法者になり、民衆に支持され、復讐も直接手をくださず、結末も明るいものとなっています。追跡シーンや牛のスタンピード、銃撃戦などの西部劇アクションに、ジムとメアリーの恋模様、コメディリリーフ的なペティボーンの存在など娯楽西部劇のツボを押さえた楽しめる作品です。ウェイン・モリスは、西部劇パーフェクトコレクションに収録されていた『テキサスの拳銃兄弟』ではコール・ヤンガーを演じていましたね。