鼻のシラノ

nostalji2005-03-31

図書館で借りてきた島田正吾:著の『随筆ひとり芝居』(三月書房)を読了。1978年青蛙房刊『ふり蛙』に掲載された随筆34編と、1990年から2002年までの“ひとり芝居”公演パンフレットに書かれた「ひと言」が収められています。島田さんといえば、辰巳柳太郎さんと並ぶ新国劇の重鎮でしたが、“豪”の辰巳に対して“柔”の島田といった感じで、本書にもそれがよく表れています。私が一番興味を引かれたのが、映画『トラ、トラ、トラ』出演時のエピソードですね。『トラ、トラ、トラ』は、1970年の日米合作映画(アメリカ側の監督がリチャード・フライシャーで、日本側が舛田利雄深作欣二)で、島田さんは野村大使の役でした。野村大使のありのままの姿を再現するためにステッキをついて撮影現場へ行ったら、すでに野村大使が国務省を訪問するシーンを、ワシントン・ロケでスタンドインを使って撮影済みとのこと。うしろ姿だけですが、ステッキを持たずに国務省の石段を勢いよく登って行ったそうです。島田さんは、「野村大使は上海事変の折りに暴漢に爆弾を投げつけられて負傷し、足が不自由なことは周知の事実なので演技者として困る」と、懸命に抗弁したそうですが受け入れられなかったそうです。島田さんの芝居にかける情熱を垣間見ましたね。
島田さんの代表作にエドモン・ロスタンの戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』を翻案した『白野弁十郎』がありますが、録画していたジェラール・ドバルデューの『シラノ・ド・ベルジュラック』(1990年/監督:ジャン・ポール・ラブノー)を観ました。フランス映画史上最高の製作費で映画化しただけあって、17世紀の雰囲気を伝えるリアルな衣装とセットで厚みのある作品となっていました。ジェラール・ドバルデューは流石に巧いで〜す。画像は、『シラノ・ド・ベルジュラック』のポスター。