深読みできる西部劇

nostalji2009-07-05

NHKハイビジョンで『ワーロック』(1959年/監督:エドワード・ドミトリク)を放映。ヘンリー・フォンダリチャード・ウィドマークアンソニー・クインが出演している本格西部劇です。荒くれ牧童から町を守るために、名うてのガンマンであるフォンダが雇われるんですな。相棒も凄腕ガンマンのクイン。二人は無法の町に保安官として雇われて秩序を回復すると、また次の無法の町へ行くという暮らしをしています。悪人がいなくなったから、自ら町を去るという小林旭の“渡り鳥”のような単純な正義のヒーローでなく、平和になると二人は恐れられ、嫌われて別の町に行かざるを得なくなるんですね。開拓時代のガンマンの実像に近い描き方をしています。
雇われ保安官コンビが、秩序回復のために牧童一味と戦うというのは、DVD発売されている近作西部劇『アパルーサの決闘』と似たようなプロットですが、『ワーロック』の方が登場人物の性格にひねりがきかせてあって、重苦しい内容になっています。特に、クインがフォンダに対して同性愛の感情をもっていて、かなり複雑な性格なんですよ。そのため、フォンダを挑発してフォンダに射たれて死ぬんですが、その心理に対する解釈が色々できて面白いんですな。
監督のエドワード・ドミトリクは、ハリウッドの赤狩りによって有罪判決を受けますが、4年後に転向してハリウッドへ復帰します。自ら当事者にならず、他人任せにする町の住民の態度は、アメリカン・デモクラシーのエゴイズムを告発しており、赤狩りに対してノー・コミットメントだった映画関係者を批判しているんですね。ラストのウィドマークとの決闘におけるフォンダの行動は、監督自身の転向の自己弁明と云えるかもしれませ〜ん。