忘れ去られた日活時代劇

nostalji2009-08-19

録画保存したままだった『初姿丑松格子』(1954年・日活/監督:滝沢英輔)を観る。料理人の丑松(島田正吾)が、恋女房のお米(島崎雪子)に横恋慕する料理屋のバカ息子を殺してしまい、お米を料理人元締めの四郎兵衛(石山健二郎)に預けて、江戸を逃れるんですな。2年後、丑松が江戸に戻ってみると、四郎兵衛はお米に手をつけ、挙句の果てに女郎屋に売りとばしています。丑松と巡り合ったお米は自分の境遇を恥じて自殺してしまい、怒りにもえて丑松が復讐する物語。
原作が原作は長谷川伸の「暗闇の丑松」で、1960年代後半の日活ヤクザ映画だと、ラストに派手な立回りがあるのでしょうが、これは文芸作品なので実におとなしいものです。そのため、カタルシスを感じることができません。島田正吾の感情を抑えた演技は巧いと思うのですが、今イチ心にグンとくるものがないのは何故だろう。とにかくチャンバラ志向の私にとって、面白味のない作品です。
戦前はチャンバラ時代劇の日活が、戦後の製作再開(1954年)において最初に取り組んだのが新国劇と組んだ時代劇でした。戦後の日活時代劇は他社のような時代劇スター(東映:千恵蔵・右太衛門・錦之助・千代ノ介、大映長谷川一夫東宝三船敏郎、新東宝嵐寛寿郎、松竹:高田浩吉)が生まれず、裕次郎・アキラの現代アクションの爆発的ヒットにより、1967年の『江戸の子鼠たち』を最後に時代劇製作はストップしました。そのため、現在では忘れ去られた存在になっていますね。
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