修正主義西部劇

nostalji2009-12-24

コーマック・マッカーシー:著(黒原敏行:訳)の『ブラッド・メリディアン』(早川書房:2009年12月25日初版発行)を読了。14歳で家出したテネシー生まれの少年がルイジアナ→テキサスと放浪し、顔見知りのホールデン判事(判事と呼ばれているだけで真の判事か疑問)に誘われて、グラントンが率いる悪党集団(実在していて、小説に描かれている登場人物もモデルがいるとのこと)に加わり、インディアン討伐(頭の皮を剥いで金を稼ぐ)の旅をする物語です。時代は1949年の米墨戦争時代で、メキシコ領に侵入してメキシコ人を奴隷にしたりします。生き残るためには、先に銃を抜いて相手を倒すという行動哲学を肯定するような問題小説ともいえますね。
この本が書かれた1985年は、ベトナム戦争の後遺症的影響があった時代で、西部劇の世界でも正義のガンマンや騎兵隊が活躍するロマンあふれるものは影をひそめ、開拓時代の社会的矛盾やインディアン虐殺を直視する西部劇(これを修正主義西部劇というのを訳者あとがきで初めて知った)が中心となっていました。映画化が決定しているようですが、『3時10分、決断の時』や『アパルーサの決闘』のような、西部劇としての面白さは期待できないでしょうね。ちなみに、マッカーシーの原作を映画化した作品には現代西部劇の『すべての美しい馬』と『ノーカントリー』があります。