リアル忍者

nostalji2010-08-06

BS2で山本薩夫特集をしていて『忍びの者』(1962年)と『続・忍びの者』(1963年)を放映。社会派作家村山知義の原作を社会派監督が演出した社会派時代劇です。それまでのドロンと消える忍者(忍術使い)から職業戦士としての忍者を描いた最初の作品でした。石川五右衛門市川雷蔵)が苛酷な忍者社会の掟の中で下忍として非人間的な扱いを受けながらも、人間性を求めて反逆していく姿を娯楽性タップリに描いていますよ。後年他の作品(『007は二度死ぬ』など)でもマネされた、五右衛門が安土城に忍び込んで、天井から垂らした糸で織田信長(城健三郎=若山富三郎)を毒殺しようとするシーンは、忍者のテクニックを描いた名場面でしたね。
それと作品の質を高めたのがキャスティングで、動きのしなやかさと翳りある性格描写を見せた主演の雷蔵もさることながら、圧倒的存在感のワカトミや、伊藤雄之助の怪演、西村晃の執拗性など、ひとくせもふたくせもある傍役陣が素晴らしかったです。
画像は、市川雷蔵藤村志保。愛する藤村志保のもとへ雷蔵が駆けつけるところで、『忍びの者』はエンドとなりますが、“続”では二人は結婚しています。子どもを忍者狩りで信長に殺され、明智光秀を利用して復讐しますが、秀吉の雑賀攻めで妻を殺され、今度は秀吉への復讐。失敗して釜茹でとなるラストは前作の爽やかさと違って陰鬱です。演出面に新しいところはなく、“続”は娯楽性だけでなく、作品的にも格段に劣りま〜す。