惹句と異なり

nostalji2011-07-24

録画していた『仇討』(1964年・東映/監督:今井正)を観る。播州の小藩を舞台にした橋本忍のオリジナル脚本です。武器庫の点検のおり、無役の下士・新八(中村錦之助)は上士(神山繁)と諍いとなり、上士からの果し合いを受けて彼を殺します。藩は私闘を禁じており、両家の申し出により二人は乱心して斬りあったものとして処理しますが、殺された上士の弟(丹波哲郎)は納得できず、新八を殺そうとして逆に斬られます。丹波錦之助の殺陣は、真剣勝負の緊迫感があって、TV時代劇では味わえない迫力がありましたよ。
二人の兄を喪い、家督相続のため三男(石立鉄男)が仇討を願い出て藩は許可します。家老立会いのもとに公の果し合いとなります。藩の意向や家名を守る兄(田村高広)の頼みもあって、仇として討たれる気持ちで臨んだ新八でしたが、見物人が大勢おしかけ、藩命を受けた助太刀たちを前にして、自分の死を見世物にすることに怒りを覚えるんですな。刃びきした刀で助太刀を打ち据え、相手の刀を奪って斬りまくるラストの大立回りは悲壮感あふれてグッドです。
家名尊重と武士としての生き方という武士道の矛盾を鋭くついた時代劇です。矛盾の中でもがき苦しみ、結局は死に追いやられていく主人公の精神的葛藤を錦之助は内面演技でうまく表現しています。今井正も、この暗い話を格調高く、醒めた視点で描いており、力作といって言いでしょう。だけど、良い時代劇ですが、“誰がみても面白い時代劇”ではありませ〜ん。
アナログ放送は本日で終了し地デジへ移行。デジタル放送で、データ放送・マルチ編成・インターネットとの連動・多チャンネル化とテレビの機能は増えますが、番組がつまらなければ同じことです。ハードでなくソフトが大事ですよ。再放送番組や韓国ドラマ・海外ドラマが増えそうだァ。