リメイクの価値

nostalji2011-10-15

録画していた『江戸遊民伝』(1959年・松竹/監督:萩原遼)を観る。クレジットに脚本が三村伸太郎・山中貞雄とあったので、「もしや」と思ったら、案の定、『河内山宗俊』(1936年/監督:山中貞雄)のリメイクでした。市井無頼の徒の河内山宗俊近衛十四郎)と金子市之丞(宇野重吉)が、不良の弟(松本錦四郎)を気遣い、けなげに生きる町娘(青山京子)のために身命を投げ出して戦う叙情的時代劇なんですが、オリジナルと比べると叙情性が今イチですね。原節子と青山京子に差があることと、カメラアングルの違いからきていると思います。
ラストで姉の身請け金を持たせた弟を逃すために、森田屋清蔵(沢村国太郎)の子分たちとの大立回りとなりますが、これは主演の近衛十四郎のチャンバラを見せるための演出ね。オリジナルでは、宗俊は材木で通路を塞ぎ身体を盾にして死んでいくのですが、この作品ではバッタバッタと斬り倒し、森田屋一家を皆殺しね。結局死なずに、松江候から金を騙し取った悪事で、捕り方に囲まれて御用となるのです。
山中貞雄は、『百萬両の壺』で従来の丹下左膳のイメージをぶち壊し、『河内山宗俊』でも従来の天保六歌撰のイメージをぶち壊したのですが、強い宗俊では従来のピカレスクヒーローと同じです。革新から保守に戻っちゃった。画像は、オリジナルの河内山宗俊河原崎長十郎)、お浪(原節子)、金子市之丞(中村翫右衛門