オリジナルの面白さ

nostalji2011-11-17

確認のため、録画保存していた『十三人の刺客』(1963年・東映/監督:工藤栄一)を再見する。ラストの大チャンバラが評判となり、集団時代劇の傑作となりましたが、刺客の首領・島田新左衛門(片岡千恵蔵)と狙われる藩主を守る鬼頭半兵衛(内田良平)との、立場が異なる侍の目に見えぬ戦いも魅力になっていますよ。
リメイク作品では出てきませんでしたが、新左衛門は最初、明石藩一行を戸田の渡しで襲撃しようと計画します。一度に荒川を渡ることはできないので、警備が手薄になると考えたんですね。藩主の駕篭を目がけて一気に勝負をかける目論見が、半兵衛は二丁の駕篭(どちらに藩主が乗っているかわからない)を用意して槍と弓で厳重にかためています。半兵衛の水際立った采配に新左衛門は、緻密な作戦が必要と考えるんですね。そこで考えたのが、美濃の落合宿でした。尾張藩明石藩一行の通行を禁止してもらい、迂回させておびき寄せ、待ち伏せするのね。
尾張藩に藩主の通行を断られた半兵衛は、足手まといとなる荷物部隊の行列だけを尾張領を通過し、藩主以下53人は騎馬で岡崎へ出て海路で帰国する計画を進言します。しかし、体面を重視する藩主の命令で、美濃の中津川で荷物部隊と合流して行列で帰国することになります。半兵衛の案であれば、落合宿を通る必要はなかったんですよ。
騎馬で一気に駆け抜けようとする半兵衛に対し、新左衛門は柵を作り、橋を落として騎馬の動きを封じます。13対53の死闘が始まるんですが、工藤栄一は集団の捌きかたが巧く、迷路に誘いこまれた藩主を何とか守ろうとする半兵衛と、藩主と半兵衛を引き離す差配をする新左衛門の動きがよくわかりますよ。
新左衛門が藩主を斬ったところへ、半兵衛が駆けつけ、新左衛門は加勢を断って半兵衛と一騎打ちして故意に斬られます。何故と聞く半兵衛に、「貴公がわしを討てば、貴公の侍としての一分の利が立とう」と応えるのね。その瞬間、半兵衛も背後から槍で刺されて死にます。侍の魅力を感じる作品で〜す。