反戦映画

nostalji2012-06-01

録画していた『人生劇場・新飛車角』(1964年・東映/監督:沢島忠)を観る。尾崎士郎の原作『人生劇場・望郷編』を背景に、笠原和夫がオリジナルキャラを創出したものです。前作で飛車角は死んでいますからね。戦争中の浅草から始まって、任侠道に生きるヤクザが戦争から帰ってきて、行方知れずとなった妻を捜す物語です。
浅草白根組の代貸・吉井角太郎(鶴田浩二)は、踊り子のまゆみ(佐久間良子)と結婚しますが、召集されて南方戦線へ。戦争が終わって帰国すると家はなく、まゆみは行方知れずとなっています。組は弟分の神戸(佐藤慶)が売春組織にして仕切っており、角太郎の居場所はありません。ストリップ一座の踊子(春川ますみ)から、まゆみが市川梅之助一座にいると聞かされた角太郎は、勝手に白根組を神戸組に替えて女を食い物にする神戸を刺し、中西(長門裕之)のストリップ一座と全国巡業の旅に出ます。三州吉良町にやってきた角太郎は、戦友の岡崎(大木実)と逢いますが、一座の興行主である足助治三郎(志村喬)と敵対する暴力団SY連盟に所属していたんですな。足助のもとへ市川梅之助一座が来て、角太郎はまゆみと再会しますが、まゆみには亭主としてまとわりつく男(西村晃)がいました。足助暗殺を断った岡崎はSY連盟に殺され、角太郎はSY連盟に殴り込みをしますが……
深手を負った角太郎が、まゆみと約束した浜辺を延々と歩くラストは切ないです。利害打算だけに心をうばわれて生きている人間が多い世相の中、恋と友情に命をかけた一途な男を描いた作品ですが、戦争の悲劇もちゃんと描いています。沢島監督は“飛車角”三部作は、任侠路線を狙ったのでなく、一本気な愛に生きた美しい日本人を描いたと言っていますが、任侠道に生きるヤクザが、欲のために何でもする新興ヤクザや権威をかさにきるヤクザと対立し、親分や友人が殺されて殴り込みという定例パターンは、このシリーズが基になったと思いま〜す。