スターの力

nostalji2012-08-26

録画保存していた『天下の名物男・一心太助』(1958年・東映/監督:沢島忠)を観る。将軍家光の参詣行列の供先を乱した母子を庇って手討になるところを大久保彦左衛門(月形龍之介)によって助けられた太助(中村錦之助)は、彦左衛門の中間となります。腰元のお仲(中原ひとみ)が家宝の皿を割って手討になりそうなところを助け、彦左衛門に許しを得て魚屋になるんですな。新参者を受入れようとしない魚河岸で大喧嘩をしたり、彦左衛門の力を借りて時化続きの魚屋たちを救済したりして太助は人気者になります。日頃から仲の悪かった旗本と大名が、総登城でごったがえす大手門で駕篭がぶつかり大争いになり、旗本は駕篭での登城が禁止されタライに乗っての登城ね。「爺、爺」と言って彦左衛門を敬愛している家光(中村錦之助の二役)でしたが、大名対策に頭を悩ましている松平伊豆守(山形勲)を思いやり、家光は旗本と大名の意地の張りあいを戒め、彦左衛門を叱責します。彦左衛門は家光の成長を慶んだものの、元気がなくなり病床につきます。太助はそんな彦左衛門を見かねて、鷹狩りに出た家光へそのことを直訴して……
小さなエピソードの積み重ねで、物語は頭を使うことなくトントン拍子で展開していきます。融通のきかない政道に彦左衛門が苦言を呈したり、旗本と大名の意地の張りあいが竹島を巡る日韓関係みたいだったりで今日的なところもありますが、とにかく、中村錦之助が光輝いています。スターのオーラが溢れていますね。錦之助の演技を受け止める月形龍之介が、これまた良いんだなァ。笑わせて、ホロっとさせて、最後は清々しい気分にさせてくれます。錦之助と龍之介の二人によって面白さが大倍増した作品で〜す。