意外性はあるが

nostalji2012-09-04

録画保存していた『忍びの者・伊賀屋敷』(1965年・大映/監督:森一生)を観る。“忍びの者”シリーズは全8作あって、石川五右衛門を主人公に3本、霧隠才蔵を主人公に3本作られていますが、これは霧隠才蔵の息子・才助が主人公になっています。父の遺志をついで徳川家打倒を謀る才助(市川雷蔵)が、幕府転覆を狙う由井正雪鈴木瑞穂)や丸橋忠弥(今井健二)に味方して、松平伊豆守(山形勲)配下の甲賀幻心斎(殿山泰司)率いる甲賀忍者と戦う物語です。
父の才蔵は大阪夏の陣(1615年)では死なずに落ちのび、島原の乱(1637年)に参加し、松平伊豆守の暗殺に失敗して死んだのね。真田幸村の娘(八千草薫)と幼馴染で、彼女は松平伊豆守に育てられ、甲賀の女忍者になっています。幸村の娘が慶安事件(1651年)に出てくるとはね。逆算すると幸村は1630年頃まで生きていたことになります。大阪夏の陣から生きのびて15年も何をしていたのだろう。
才助の活躍にもかかわらず、決起の秘密がばれたのは、不逞浪人を一掃するために伊豆守と正雪が仕組んだ策謀だったというのは面白いアイデアです。だけど、シリーズ初期の忍者としての人間的苦悩といった陰影が薄くなり、主人公は単なる復讐者にすぎないため、シリーズとしての特異性を失っています。八千草薫に女性としての幸福を説き、雷蔵が独り旅立って行くラストは平凡な娯楽映画で〜す。