同じ題材だが

nostalji2012-09-06

録画保存していた『真田風雲録』(1963年・東映/監督:加藤泰)を観る。福田善之の戯曲を彼自身が脚色した時代劇コメディです。単に可笑しいだけでなく、昨日観た『天草四郎時貞』と同様に60年安保闘争敗北をテーマにしています。前者と違うのは、若者たちの心情を理屈でなく明るく笑わせながら描いたことですね。
主人公は猿飛佐助(中村錦之助)で、赤ん坊の時に隕石の放射能で人の心が読めるという超能力を持っています。佐助を慕うお霧(渡辺美佐子)、お霧に恋する海野六郎ジェリー藤尾)、三好清海(大前均)・伊佐(常田富士雄)兄弟、根津甚八米倉斉加年)、筧十蔵(春日俊二)、由利鎌之助ミッキー・カーチス)たちと仲間になり、徳川との戦準備に忙しい大阪城へ向かうのね。途中でカッコよく死にたいと願っている真田幸村千秋実)と知りあい、家来の穴山小助河原崎長一郎)と望月六郎(和崎俊哉)が仲間になります。真田幸村傘下の真田十勇士の勢揃いです。いきなりバテレン服のミッキー・カーチスがギター弾きながら歌ったり、ジェリー藤尾をリードヴォーカルに「真田十勇士の歌(♪〜どうせ人間50年、カッコよく死にてえな〜)」をコーラスしたりと、ミュージカルの世界ね。
大阪城に来てみると、淀君花柳小菊)がひとり浮いていて、長老たちに戦う気はなく、浪人たちはノンビリできて毎日食べることさえできればいいと思っているし、秀頼(水木襄)と千姫(本間千代子)は遊びに夢中。家老の大野修理(佐藤慶)だけは心が読めませんが、豊臣軍に戦う気力がなく負けは目に見えているんですな。それで真田十勇士が「真田隊マーチ」にのって勝手に出撃し、徳川方を打ち負かすんですが、誉められるどころか命令違反で幸村は捕らえられてしまいます。徳川方は和議を申し入れて、外堀だけでなく総堀と偽って内堀まで埋めてしまい、再び合戦ね。幸村と修理の最期はバツグンのブラックユーモアで笑えます。
十勇士は散りぢりになり、独り残った佐助は、生きる目的がなくなったと言う宿敵・服部半蔵(原田甲子郎)を倒し、「いつかまた皆と会えるだろう」とつぶやきながら去って行くのね。連帯闘争とは、政治とは、生きるとは何かという問いを、悲壮感なくナンセンスな笑いで描いた青春時代劇の傑作で〜す。