老けた以蔵だが

nostalji2013-01-06

録画していた『人斬り』(1969年・大映/監督:五社英雄)を観る。土佐の貧乏郷士岡田以蔵勝新太郎)が、土佐勤王党首・武市半平太仲代達矢)に命じられるままに人斬りをし、名前をあげていくのですが、自我に目覚めた時、無用の長物として捨てられるテロリストの運命を描いた作品です。カツシンの以蔵はエネルギッシュで粘っこいのですが、若さがないのが辛いですね。貫禄がありすぎて、坂本龍馬石原裕次郎)とも同格の友情関係になっています。橋本忍の脚本は、龍馬と半平太の関係に触れておらず、喰い足らないところがありますが、武市半平太を単なる尊王攘夷の勤王思想家でなく、冷徹な革命家として描いているのは面白い解釈でしたね。姉小路公知暗殺の黒幕が武市半平太で、実行犯が岡田以蔵というのは新解釈ね。
通説では、姉小路公知暗殺は薩摩の田中新兵衛とされているのですが、これも謎が多くて真犯人はわかっていません。この田中新兵衛役で三島由紀夫が出演しており、存在感がありましたよ。人斬り新兵衛らしい立回りもグッド。立回りといえば、冒頭に暗殺される吉田東洋役の辰巳柳太郎も、リアルな殺陣を見せてくれて迫力がありました。ただ、血の洪水だらけの五社演出は私の好みじゃないですけど。
画像は、カツシンと紅一点というべき出演者の倍賞美津子。以蔵の心の癒しとなる女郎役で、出演シーンはカツシンとのふたり芝居ね。以蔵は捕り方に捕まるのでなく、身請代金30両を得るために自ら出頭して半平太に命じられた暗殺を告白するというラストになっていました。