トーキーへの移行時期

nostalji2013-01-26

無声時代劇DVDの『決戦荒神山』(1932年/監督:金田繁・大友麟三)を観る。賭場荒しをするならず者を斬ったことから、吉良の仁吉(月形龍之介)と神戸の長吉(阿部九州男)がワラジをはくところから物語は始まります。1年後に故郷に戻ってくると、長吉の縄張である荒神山が後を頼んだ安濃徳に奪われているんですな。仁吉の女房・お菊は安濃徳の妹でしたが、弟分の長吉のためにお菊を離縁し、安濃徳と対決ね。安濃徳のバックには黒駒一家がついており、仁吉に世話になった大政たち次郎長一家が助っ人して荒神山の決戦となるお馴染みの物語が浪曲によって展開していきます。
日本で最初の完璧なトーキーが製作されたのは1931年の『マダムと女房』(監督:五所平之助)でしたが、全ての映画がトーキーになったのは1935年でした。それまでは無声映画からトーキーに向けて色々な試行がされたようです。音楽部分にだけが音を入れたりするパートトーキーとか、この作品のように俳優の音声はなく、浪曲師・広沢虎造の音声だけとかね。内容はともかく、映画史の資料として貴重な作品です。でもって無声時代劇DVDは、これでおしまい。
ビデオに録画保存していたテレビ時代劇『剣』の第37話「俺は陰陽師」(監督:春原政久、脚本:高橋二三)を観る。刀のおかげで占いが的中するようになった陰陽師の物語です。刀の持ち人は、陰陽師・安倍安平(藤田まこと)ね。安平は、義太夫は上手いが占いは全然だめな陰陽師の跡取り息子。父(佐々木孝丸)が刀の厄払いをしていて倒れ、後を継ぐことになるんですな。その刀を手にした時、霊感が閃き、占いが的中するようになります。刀の持ち主が安平に結婚を迫り、自らを占うと愛する女(宮本信子)と義太夫をして暮らしている自分が見え、刀を返して陰陽師をやめ、メデタシ、メデタシ。第17話「珍説天保水滸伝」でもそうでしたが、この頃の藤田まことは真面目な軽薄キャラがピッタリね。