評判ほどには

nostalji2013-03-07

昨日は、『ジャンゴ繋がれざる者』(2012年/監督:クエンティン・タランティーノ)を観る。平日なのに、やけに並んでいると思ったらレディス・デイで女性客は割安になるのね。お目当ては他の映画(『レ・ミゼラブル』とかね)で、西部劇を観る女性客などいないと思っていたんですが、結構いましたね。
でもって、『ジャンゴ繋がれざる者』ですが、賞金稼ぎのキング・シュルツ(クリストフ・ヴァルツ)が狙う獲物の顔を知っているジャンゴ(ジェイミー・フォックス)を奴隷商人から助け出して相棒にするんですな。ジャンゴはシュルツから銃の手ほどきなどを受け、立派な賞金稼ぎになります。そして、売られた妻ブルームヒルダ(ケリー・ワシントン)を買い戻すためにシュルツと大農園主のカルビン・キャンディ(レオナルド・ディカプリオ)の屋敷を訪れますが……
上映時間165分は長い。長いけど、さすがタランティーノで最後まで退屈させません。だけど、2時間程度で収まる内容です。『続・荒野の用心棒』の主題歌(ロッキー・ロバーツが歌う英語盤で、ベルト・フィアが歌う伊語盤でなかったのが残念)に赤いロゴのクレジットというオープニングはまさにマカロニウエスタン。ぬかるみの町も『続・荒野の用心棒』の世界ね。観た時は気づかなかったのですが、パンフレットによると町の酒場の名はミネソタ・クレイ(『ミネソタ無頼』の主人公の名)のサルーンだったとか。黒人女を鞭打とうしている無法者がジャンゴの最初に相手というのも『続・荒野の用心棒』ですね。ジャンゴが拳銃の練習するときに流れる曲が『怒りの荒野』なんて、まんまじゃありませんか。雪の荒野は『殺しが静かにやって来る』ね。ジャンゴとインバネスコートをはおるフランコ・ネロとの会話にニンマリ。だけど、マカロニを意識していたのはここまでで、キャンディの屋敷に行ってからは映画のトーンががらりと変わります。ディカプリオとヴァルツと執事役のサミュエル・L・ジャクソンによる会話を楽しむ世界になるんですな。アカデミー助演男優賞をとったヴァルツの自然な演技に対して、ディカプリオとジャクソンの臭いこと。ジェイミー・フォックスは蚊帳の外ね。クライマックスは、三隅研次の『子連れ狼』のごとく血みどろ銃撃戦。ジャクソンがジャンゴの最後の対決相手で、ラストは『続・荒野の用心棒』で締めていますね。
タランティーノの西部劇と聞いて、『キル・ビル』のように、ハチャメチャなマカロニウエスタンドン・ジョンソンが率いる赤い覆面をした一団に襲われたジャンゴが馬車に隠していた機関銃で皆殺しにしたり、『風と共に去りぬ』のレット・バトラーのような服装でなく白い服装をしたディカプリオが首を傾むけて鞭をふるったり、捕まったジャンゴが首だけ出して地中に埋められ太陽に焼かれる拷問を受けるとかね)を期待していたのですが、表立って奴隷問題を持ち込んだりして、ハチャメチャさがなく、いささかガッカリしました。ハチャメチャな中に、裏のテーマを探ることがマカロニの魅力なんだけどねェ。