剣に苦悩せず

nostalji2013-04-22

録画保存していた『続・宮本武蔵一乗寺の決闘』(1955年・東宝/監督:稲垣浩)を観る。伊賀の荒野で鎖鎌の宍戸梅軒(東野英治郎)を倒して京にやってきた武蔵(三船敏郎)は吉岡道場を訪れます。当主の清十郎(平田昭彦)は、弟子の祇園藤次(加東大介)とお甲(水戸光子)の料亭に入り浸っており、朱美(岡田茉莉子)にゾッコン。武蔵は弟子たちを打ち据え、清十郎に伝言を残して立ち去りますが、吉岡一門は清十郎を武蔵と立ちあわせようとせず、執拗に武蔵をつけねらいます。旅から帰った清十郎の弟・伝七郎(藤木悠)が三十三間堂に武蔵を呼び出して敗れたことから、吉岡一門は武蔵を一乗寺下り松でだまし討ちにしようとするのね。それを知った清十郎は駆けつけ、逃げてきた武蔵と決闘となり、武蔵に斬られるという原作とは違う脚色をしています。
本位田又八堺左千夫)は、祇園藤次に乗りかえたお甲のもとから去り、お杉婆と再会。一乗寺でお通を見つけ、お通の心が武蔵にあると知ってお通を襲いますが、佐々木小次郎鶴田浩二)がお通を助けます。原作では主要人物のひとりである又八ですが、存在が薄いものになっており、第三部では登場しません。お通のことはあきらめて. お杉婆と故郷に帰ったのでしょう。
小次郎はお通を助けるだけでなく、清十郎から逃げた朱美を追ってきた祇園藤次の髷を斬ったりと、単なる武蔵の剣のライバル以上の扱いになっています。当時の三船と鶴田は同格で、鶴田は女性人気がありましたからね。とにかくカッコいい存在なのです。
三船の武蔵は、お通や朱美だけでなく吉野太夫木暮実千代)にも慕われるモテ男。錦之助の武蔵のように剣に悩むこともなく、向かってきた相手をただ斬るだけの強いヒーローとなっています。原作では名目人の少年を斬って逃走するのですが、ヒーローなので子どもは斬らないのだよ。求道者としての位置づけは弱いで〜す。