スピードはないが

nostalji2013-05-29

ビデオに録画保存していた『宮本武蔵一乗寺決闘』(1942年・日活/監督:稲垣浩)を観る。吉岡道場を訪れた武蔵(片岡千恵蔵)が、頭首・清十郎(浅香新八郎)が留守のため門弟を打ち負かし、奈良の宝蔵院へ。宝蔵院で阿厳を倒し、京に戻って吉岡一門を倒す一乗寺決闘までを描いています。稲垣浩片岡千恵蔵主演で“宮本武蔵三部作”(1940年)がありますが、それとは別の独立した作品です。そのため、佐々木小次郎本位田又八も朱美も登場しません。お通(宮城千賀子)は登場しますが、武蔵との関係は観客周知を前提に描いていますね。
阿厳との対決の後、宝蔵院の高僧・日観から「弱くなること」を諭され、吉岡伝七郎との対決の後、吉野太夫市川春代)から「心に余裕がないこと」を指摘され、一乗寺決闘の後、比叡山の僧(志村喬)から「情けを知らぬこと」を侮蔑され、武蔵に敗れた清十郎が出家して悟りを開くのと対照的に、苦悩する武蔵が観音像を刻む姿がラストという人間形成がテーマになっています。
チャンバラシーンは多いのですが、相手を斬り倒すシーンは多くありません。伝七郎との対決も、二人が近づき枝の雪が散ったところで場面が変わり、茶屋に武蔵が帰ってきます。千恵蔵の殺陣は、じっくり構えて相手を睨みつけ、顔で斬る感じですね。立回りにスピード感はありませんが、重量感があって悪くありませ〜ん。