時代劇というより西部劇

nostalji2013-09-21

昨日、『許されざる者』(2013年/監督:李相日)を観てきた。巧く1878年の日本に舞台を置き換えていましたね。だけど、史実的には首をかしげるところがありました。当時は廃刀令が施行されていてリチャード・ハリスにあたる國村隼の元長州藩士が表立って刀を差して現れるのは可笑しいです。それに開拓村で薩摩の悪口を言うのもね。開拓民に薩摩藩士はいませんよ。薩摩藩士は出世していて、ジーン・ハックマンにあたる佐藤浩市の町長兼警察署長のような管理役人です。長州藩士も出世していたと思うんですけどね。
明治初期なので銃器が出てくるのは当然ですが、モーガン・フリーマンにあたる柄本明が持っていたライフルがウィンチェスターというのは頷けません。元幕府軍の貧乏人がどうやって手に入れたのだろう。ジェームズ・ウールヴェットにあたる柳楽優弥アイヌの若者が持っていた拳銃もね。混血という設定なので、父親が持っていた銃かな。銃器にこだわったイーストウッドを見習って、函館戦争で榎本軍が使った銃器ぐらい使ってほしかったです。
オリジナルは、アメリカ映画史の中で大きな比重を占める西部劇史にかかわる“老いたるヒーロー”と“英雄伝説の破壊”というテーマを含んでいたので名作になりましたが、時代劇ではね。せっかく、主人公(渡辺謙)の妻アイヌにし、若者をアイヌの混血にして、オリジナルにはないアイヌ差別のシ−ンを入れたのですから、差別問題をもっと強調したらよかったような気がします。韓国人が観たら反日プロパガンダに結びつけるかもしれませんけどね。
映像的には北海道ロケが充分に活かされており、まさに日本の西部劇になっていました。渡辺謙の存在感ある演技もよし。傑作といかないまでも、上出来作品で〜す。