評価が分かれるが

nostalji2013-10-10

西部劇ビデオの『無法の王者ジェシー・ジェームズ』(1956年/監督:ニコラス・レイ)を観る。回想形式で描いたジェシー・ジェームズの物語です。
南北戦争中、北軍派住民によって一家を追放されたジェシー・ジェームズ(ロバート・ワグナー)は兄フランク(ジェフリー・ハンター)のいる南軍ゲリラに加わりますが、戦争は負け、負傷して従姉妹のジーホープ・ラング)の家の世話になり、ジーと恋仲になります。祈祷会でヤンガー兄弟と会ったジェシーは強盗団を結成し、北部系の銀行や鉄道を襲撃するのね。鉄道に雇われたレミントン(アラン・バクスター)が北軍派農民とジェシーの家を爆破、弟が死に、母親(アグネス・ムーアヘッド)が片腕を失います。州知事より恩赦の沙汰が出ますが、ジェシーがレミントンに密告した農夫を殺したことからご破算に。ジェシーは荒稼ぎをするために、ミズーリから遠く離れたミネソタ州ノースフィールドの銀行襲撃を計画しますが……
原題に“The True Story”とあるように、『地獄への道』より史実に近いものになっています。ノースフィールド襲撃におけるロングコート姿は、50年代の作品では珍しいですよ。食事の世話になった借金に苦しむ南軍未亡人に金を渡し、取り立てて帰って行く借金取りから渡した金をチャッカリ取り返す伝説を織り込んでいたのも嬉しかったです。
映画はノースフィールド襲撃に始まり、自警団によるジェシー追跡シーンは中々の迫力です。ただ、そこから回想によって過去が紹介されていく形式のため、ノースフィールド襲撃からボブ・フォードによって殺されるまでの盛り上がりが分断され、全体の印象が薄められましたね。自分の時計を命令にそむいた仲間の時計とすりかえ、逃亡のドサクサにその仲間を殺して自分が死んだように見せかけるジェシーの冷酷な一面など、『地獄への道』の綺麗ごとのジェシーと比べて優れていると思います。だけど、西部劇のヒーロー像として、ニコラス・レイの演出は、観客には評判が悪かったようです。
馬から列車に飛び乗り、屋根の上を先頭車両まで進んでいくカットや、自警団に追われて馬ごと断崖から河へ跳び込むカットは、『地獄への道』と同じカットですが、リスペクトとみるかマネとみるかで見解が分かれるでしょうね。ヨーロッパでは好評のニコラス・レイですが、当時のアメリカでの評価は芳しくありません。画像は、ロバート・ワグナーとホープ・ラング。