隆盛は無理でも

nostalji2014-10-13

春日太一:著の『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮新書:2014年9月20日発行)を読了。表紙帯の裏面に、時代劇がダメになった本当の理由として7つ挙げています。“「高齢者向けで古臭い」という固定観念”“『水戸黄門』という特異なシステム”“「自然体」しか演じられないヘタな役者”“「火野正平(=味のある脇役・悪役)」の不在”“マンネリ演出を打破できない監督”“何もかも説明してしまう饒舌な脚本”“朝ドラ化するNHKの大河ドラマ”で、詳しいことを知りたけば本文を読め、ということね。
でもって、全体的には著者と同意見です。だけど、時代劇を身近なものにしていくには、著者の指摘が正しいかというと疑問です。時代劇趣味の人だけを対象としていては商売になりませんからね。70〜80年代、テレビ時代劇は全盛で良質なものもありましたが、結局は粗製濫造でマンネリ化し、トレンディー・ドラマなど面白い現代劇へ視聴者は去って行きました。最近はドラマ全体がダメで、その中で時代劇の製作数を増やすには、時代劇に興味のなかった人を惹きつけなければなりません。現在放送されている時代劇枠はNHK大河と木曜・金曜時代劇しかないので、そこでしか試行錯誤するしかないんですね。視聴率のよかった『篤姫』なんか、著者には悪評ですが、当時ブームだった韓国時代劇に影響を受けたあざとい物語展開で、従来の時代劇ファン以外が観ていたと思います。木曜・金曜時代劇で若手を起用するのも、時代劇のできる演者を増やしていくうえで必要です。テレビ時代劇は民放テレビ局自体の弱体化で期待できませんが、映画においては作品数が増えてきており滅びることはないと思いま〜す。