テレビから映画へ

nostalji2014-11-30

録画していた時代劇『牙狼之介』(1966年・東映/監督:五社英雄)を観る。さすらいの浪人・牙狼之介(夏八木勲)が、街道運送を独占しようとする悪党をやっつける物語です。夏八木勲の初主演作ね。
街道で斬られた運送人足の死体を運んできた牙狼之介は、荒井宿問屋場の盲目の女主人お千世(宮園純子)の頼みで力を貸すことになります。御用飛脚・仁左衛門遠藤辰雄)が宿場運送を独占しようとしており、お千世に嫌がらせをしていたのね。仁左衛門は凄腕の用心棒3人を狼之介に斬られたことから、殺し屋・秋月左内(内田良平)を雇います。親分を左内に殺された矢車一家が荒井宿へ。そんな折、今井宿までの公金3万両の輸送をお千世が引き受け、仁左衛門はその金を奪って、お千世を潰そうと考えます。仁左衛門に頼まれた左内は、情婦のお秀とその金を横取りしようと考え、そのことを知った矢車一家のお竜は仁左衛門と組んで、左内を殺そうと考えるのね。狼之介が護送する3万両の輸送隊が出発し……
この作品の公開当時の東映は任侠路線(健さんの3シリーズが客を集めていた)に方向転換し、時代劇では客を呼べなくなっていました。そこで、『三匹の侍』でテレビ時代劇に革新をおこし、松竹で劇場版『三匹の侍』と『獣の剣』を作って実績のある五社英雄を起用し、中村錦之助主演で『丹下左膳・飛燕居合斬り』を製作。残念ながらこの作品は、中途半端な内容で今イチでした。大スター錦之助相手では五社英雄も思う存分演出できなかったようです。
牙狼之介』ではデビュー2作目の夏八木勲を使って、五社演出をいかんなく発揮していますね。細かいカット割り(テレビ時代の経験が活かされている)と、スローモーションやストップモーションを使った殺陣シーンは見応えがあります。本来の殺陣の面白さは、近衛十四郎のような技量の優れた役者による長回しの立回りにあると思うのですが、そんな役者は数少ないですからね。演出はあったものの、夏八木勲と用心棒役の佐藤京一との対決は迫力ありましたよ。剣戟アクション映画としては上出来で〜す。