久しぶりに劇場で観た西部劇

nostalji2015-07-13

昨日は西部劇仲間の会合に都内まで出たついでに『悪党に粛清を』(監督:クリスチャン・レヴリング)を観る。デンマークの監督が南アフリカでロケした本格的西部劇です。
話はいたって単純。デンマークからアメリカ西部へ移住したジョン(マッツ・ミケルセン)は、故郷から妻子を呼び寄せますが、駅馬車に乗りこんできた刑務所から出たばかりの二人の無法者に妻子を無残に殺されます。ジョンは二人を殺して復讐しますが、その一人が町を暴力で支配する(ジェフリー・ディーン・モーガン)の弟だったことから、町から去ろうとしていたジョンをデラルーに脅された町民が捕えるのね。兄のピーターがジョンを救い出しますが、ピーターはデラルーに惨殺され、ジョンはデラルーへの復讐を決意。デラルーは殺された弟の妻マデリン(エヴァ・グリーン)を強引に自分のものにしますが、マデリンは密かにデラルーへの復讐の機会を待ち……
やられたらやりかえす“半沢直樹”の倍返しの復讐劇が展開します。復讐に心の救済はあるのか。原題(THE SALVATION)は宗教的意味での「救い」とか「救済」で、主要人物3人(ジョン、デラルー、マデリン)の心の救済を問いかけていると思いますね。
クリスチャン・レヴリングは西部劇が好きなようで、モニュメントバレーにあるようなメサの風景を求めて南アフリカまで出かけてロケするなんて好きでなければできません。そんな風景を背景にオープンセットを作り、ジョン・フォードの『荒野の決闘』に似せたカメラ構図をとっています。クライマックスで馬屋の火事で逃げ出した馬の群れの間を縫うように銃撃戦が行われるのは、もろ『荒野の決闘』ですよ。
しかし、ジョン・フォードに敬意を表しつつも、バックボーンにあるのはマカロニウエスタンですな。1957年生まれなので、ヨーロッパで上映された西部劇をリアルタイムで観たものといえば多くはマカロニでしょう。音楽、宗教的匂いを含ませる内容、冒頭の鉄道駅のシーンを始めとして多くのシーンにセルジオ・レオーネの影響が見受けられます。
西部劇には珍しい女性客がチラホラ見受けられたのは、マッツ・ミケルセンが目当て? 物静かで、禁欲的な表情が魅力のようです。エヴァ・グリーンは、最近の私の気になる女優のひとりで、セリフよりも表情による表現力が豊かで、今回の物言わぬヒロインにはピッタリ。何かを仕出かす凄さも見せていました。
本格西部劇といっても本場の西部劇でなく、洗練されたマカロニウエスタンなので〜す。