緋牡丹でなく牡丹蝶

nostalji2015-08-07

録画していた『日本侠客伝・花と龍』(1969年・東映/監督:マキノ雅弘)を観る。尾崎士郎の『人生劇場』と並ぶ、火野葦平原作の任侠文芸です。これまで何度も映画化されており、裕次郎錦之助のは観ているのですが、健さんのは未見だったのでね。
玉井金五郎(高倉健)は日露戦争での戦友・太田新之助二谷英明)を頼って九州・若松へやって来ます。山尾組の沖仲仕(ゴンゾ)になり、そこで働くマン(星由里子)やマンの兄・林助(山本麟一)と知りあうのね。新之助と林助に連れて行かれた賭場で壺振りのお京(藤純子)とも知り合います。金五郎は腕と度胸でメキメキ頭角を現しますが、大村組との喧嘩でケガをします。菊の花を飾り、介抱してくれたマンにライターを贈りますが、若松を視察にきた大親分・吉田磯吉(若山富三郎)の連れの芸者がそのライターを珍しがり、芸者に同行していた若松を牛耳る伊崎組の子分が取りあげようとし、マンを助けようとした新之助がリンチをうけ大ケガ。金五郎は宴席に乗り込み、毅然たる態度で伊崎の非を糺します。吉田親分は頭を下げますが、山尾は恥をかかされた伊崎(天津敏)を恐れ、金五郎を若松から追い出します。金五郎はいつのまにか愛しあうようになったマンと一緒に戸畑へ。
それから2年、マンと所帯を持ち、永田組の助役になっていた金五郎は、パナマ船の積荷作業で伊崎組と対立します。金五郎が永田(上田吉二郎)と出かけた寄合で、金五郎はお京に再会。出会った時から惹かれていた金五郎が結婚していると知ってお京はガッカリしますが、牡丹と蝶のお京の刺青を見た金五郎から菊を咥えた龍の刺青を頼まれます。金五郎が刺青をしている留守に、伊崎組に加わった新之助が偽の契約書をもって現れます。マンに恋していた新之助は、マンと一緒になった金五郎を恨んでいたのね。しかし、金五郎の活躍でパナマ船の積荷作業は永田組がすることになり、永田は引退して玉井一家をおこさせます。沖仲仕の組合を作ろうとする金五郎をよく思わない伊崎は、金五郎の協力者である大庭(水島道太郎)を殺し、金五郎を自邸に誘き寄せますが、伊崎の日頃のやり方に怒りを覚えた新之助と客分でいたお京が金五郎に加勢して……
棚田吾郎の脚本は原作を大幅に脚色し、東映任侠カラーにしています。新之助は原作にはない人物だし、お京はまるで緋牡丹お竜みたいになっています。パナマ船の積荷作業や仲仕組合で敵対ヤクザとの対立は原作にも出てきますが、相手親分はそんなに卑劣漢じゃありませんよ。天津敏にピッタシのキャラでしたな。
化粧気なしのメイクで男に交じって働く勝気な女を星由里子が好演。星由里子はスターであっても上手な役者じゃないですが、マキノ雅弘の手にかかると見事な演技です。愛する男に見せる女心も抜群で〜す。