気分を変えて

nostalji2015-10-29

録画していた『博奕打ち外伝』(1972年・東映/監督:山下耕作)を観る。明治中期の北九州・若松を舞台に侠客道に生きた男たちを描いたヤクザ映画です。
若松は九州睦会の大室(若山富三郎)一家と江川(鶴田浩二)一家が対立しており、江川の弟・政和(伊吹吾郎)が大室一家の代貸・滝(松方弘樹)に拉致されたことから一触即発になります。大室とも江川とも兄弟分の睦会宗家・浦田(辰巳柳太郎)一家の代貸・花田(高倉健)の仲裁で丸く収まりますが、浦田が睦会の後継者を大室に決めたことから若松が再び暗雲。浦田は花田が自分の隠し子であったことから私利を捨てた配慮だったのね。花田もそのことを知っており、鉱山の納屋頭として組を出ることを決意し、江川に大室との喧嘩はしないように頼みます。事情を知った江川は花田との約束を守り、大室に無断で江川一家の縄張を荒らす滝の行動にガマンをしますが、花田と江川の事情を知らない江川の弟・鉄次(菅原文太)は旅から帰ってきて大室一家の賭場を荒すんですな。江川は大室に詫びを入れますが、鉄次と政和が滝に闇討ちされます。鉄次と政和が死んだのは自分の責任と感じた花田は切腹して江川に詫びをいれ、大室に責任を問うた浦田も滝に殺されたことから、江川は大室と決着をつけるために大室一家へ……
悪いヤクザの仕打ちにガマンにガマンを重ね、ついに堪忍袋の緒を斬って殴り込みという単純なパターンと少し異なる作品となっています。大室一家の代貸・滝が悪役なんですが、彼なりに筋が通っているんですよ。若松の賭場は昔から大室一家が仕切っていたところへ、関西からやってきた江川が炭鉱景気に沸く川人足の頭となって、川人足相手に縄張りを持ったことに滝には面白くないわけね。武闘派(身体に負った傷がそれを物語っている)の滝は大室のために江川一家と喧嘩して決着をつけようと考えているのですが、江川がのってこないので無法がエスカレートするんです。滝の行動に驚いた大室ですが、自分のためにした行動とわかり、江川に滝が殺された後、江川と1対1での決闘に臨みます。義理に生き、情に耐え、心で涙する、ヤクザという特殊な世界を描いた佳作といえま〜す。