遅ればせながら

nostalji2015-11-30

昨年11月28日に亡くなった文太さんを偲んで録画した『炎のごとく』(1981年・東宝/監督:加藤泰)を観る。幕末の京都を舞台に、限りなく愛したひとりの女との関わり合いで描く、実在の侠客・会津小鉄を主人公にした時代劇です。
喧嘩で人を殺して大阪を追放になり、放浪していた仙吉(菅原文太)は、賭場のいざこざから深傷を負い、離れ瞥女のおりん(倍賞美津子)に助けられます。二人は結ばれ、京都へ。京都で大垣屋清八(若山富三郎)のところへ草鞋を脱いだ二人は暫く平穏な生活を送りますが、仙吉が鴨川の河原で賭場を開いたことから名張屋一家といざこざになります。弟分を殺されて仙吉に怨みを持つ赤蝮の権次(汐路章)と名張屋一家の子分が仙吉の寝込みを襲い、おりんが仙吉を庇って殺されるのね。仙吉は名張屋に乗り込みますが、権次は逃亡した後で仇を討つこともできず、いざこざの原因が仙吉にあったことから親分衆の前で仙吉は号泣。二部構成になっており、ここまでが前半ね。
後半は、大垣屋が京都守護職会津藩の仕事を全面的に請け負ったことから大垣屋の身内同然の仙吉は新選組と関わりを持ちます。愛用の長脇差虎徹の鍛えた業物だったことから会津小鉄の異名をとる侠客に成長。虎徹が縁で近藤勇佐藤允)と親しくなり、隊士の佐々木(国広富之)と長屋の娘あぐり(豊田充里)との恋をとりもちます。幼馴染みのお富(きたむらあきこ)が嫁にして欲しいと迫りますが、仙吉はおりんが忘れられないのね。芹沢鴨川合伸旺)があぐりを妾にしようとして拒まれ、佐々木とあぐりを殺害。仙吉は近藤に怒りをぶつけますが……
情感たっぷりに描かれる仙吉とおりんの恋模様、仙吉の無頼ぶり、仙吉と大垣屋一家(親分の若山富三郎、妻の中村玉緒、子分の藤山寛美)との絡みの可笑しみなど前半の面白さに対して、後半は天誅騒ぎ・芹沢暗殺・池田屋事件・姶御門の変などの歴史的事項を絡めて描いているために散漫になっています。男と女の素敵な恋を軸に、人生をどう生きたら良いか、自分の考えを貫くためにどう闘うかを描きたかったのでしょうが、竜頭蛇尾になった感じです。
文太さんは、“仁義なき戦い”でみせた筋の通った無頼ぶり、“トラック野郎”で見せたコミカルぶりを充分に見せていま〜す。