国民的スター

nostalji2016-03-11

録画していた『昭和偉人伝:高倉健』を観る。映画デビューした昭和30年代から年代ごとに節目となる作品を紹介し、当時の社会情勢と健さんの軌跡を追ったドキュメンタリーです。
昭和30年代は『森と湖のまつり』(1958年/監督:内田吐夢)で、健さんが演技というものを考える機会となった作品としています。共演した有馬稲子健さんの演技は下手だったと話しており、未見ですが私も健さんの演技は想像がつきます。内田吐夢健さんを主役にしたのは、時代に逆流する男の佇まいを健さんに感じたからじゃないですかね。そして、その佇まいが開花するのが昭和40年代の任侠映画です。
高度成長による近代化は、合理的機能主義の歯車として人間性を喪失させる危機感を感じさせていきました。そんな中、『日本侠客伝』や『昭和残侠伝』は近代が失ったすべてが描かれており、健さんがそんな閉塞感を取り払ってくれました。
大衆に支持された任侠路線も10年続けばマンネリ化します。東映は実録路線に転換し、健さんはフリーとなり、『君よ憤怒の河を渉れ』(1976年/監督:佐藤純弥)に出演。私としては、内容にも健さんのキャラにも満足していない作品ですが、文化大革命後の中国で大ヒットしました。明らかに中国の社会情勢がヒットさせ、健さんは今でも中国で一番有名な日本人スターです。
そして、『ブラック・レイン』(1989年/監督:リドリー・スコット)で国際スターとなりましたが、健さんが誰からも愛され、リスペクトされる国民的スターになっていったのは、やっぱり『幸福の黄色いハンカチ』(1977年/監督:山田洋次)からでしょうねェ。