西部劇が好きなので

nostalji2016-05-07

昨日はさいたま新都心まででかけ、久方ぶりにスクリーンで『レヴェナント:蘇えりし者』(2015年/監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ)を観る。アカデミー賞で、監督賞・撮影賞・主演男優賞を受賞したとあってか、連休の合間の平日でしたが性別・年齢を問わず結構入っていましたね。私はそんなことより、西部劇として観に行ったのです。
1823年、ヘンリー隊長(ドーナル・グリーソン)率いる毛皮ハンターの一団が、娘をさらった白人を捜す先住民アリカラ族に襲われます。食料調達に森へ行っていたヒュー・グラス(レオナルド・ディカプリオ)と息子のホーク(フォレスト・グッドラック)が駆け戻り、生き残った仲間を船に誘導して救出。船で川を下るのは危険と判断したグラスは、山沿いに歩いてカイオワ砦まで帰ることを隊長に進言します。陸路を進み始めて間もなく、偵察に出ていたグラスが灰色熊に襲われて瀕死の重傷を負うのね。隊長は余命わずかに見えるグラスを残して先に進むことを決断し、ホークとジム・ブリッジャー(ウィル・ポーター)、それにジョン・フィッツジェラルドトム・ハーディ)に臨終を看取るように命じます。金が目当てで居残りに志願しただけのフィッツジェラルドは、グラスを殺して砦に帰ろうとしますがホークに邪魔されホークを殺害。アリカラ族が迫っているとブリッジャーを騙してグラスを置き去りにします。息子を失った悲しみと絶望、フィッツジェラルドへの怒りと憎しみを原動力にグラスは死の淵から蘇えり……
ヒュー・グラスは実在の人物で、灰色熊に襲われて、仲間に死んだと思われて置き去りにされ、ロッキー山中からカイオワ砦までの320キロを6週間かけて戻ってきた実話を基にしています。殺された息子の復讐話はフィクションですけどね。残された熊の毛皮を羽織り、水場まで這っていってグミの実を食べたり、狼が残したバッファローの死体の肉を食べたりしたそうですからサバイバル方法は実話に近いものです。
ディカプリオが熊に襲われるシーンは圧巻で、撮影賞を受賞したのが理解できます。このシーンだけでこの映画を観る価値はありますよ。すべてを自然光で撮ったというエマニュエル・ルベッキの撮影技術は素晴らしいです。ディカプリオの熱演にも受賞は納得。
イニャリトゥの演出は、冒頭のインディアン襲撃シーンやラストのディカプリオとハーディの決闘シーンのアクションは見事なのですが、全体としては一本調子です。特にサバイバルになってからは、映像は美しいのですが同じようなカットの繰り返しが見られ、フィッツジェラルドとブリッジャーの会話のような無駄なシーンがあります。神の存在、神なき世界を表現したかったのかも知れませんが余計なものになったような気がします。サバイバル時の各エピソードも同じリズムになっているのでメリハリが欲しかったですね。
坂本龍一の音楽は繊細で、派手さはないものの、静かな余韻の残るものになっていま〜す。