捕物帖の元祖だが

nostalji2016-09-07

友人が送ってくれた東映時代劇『半七捕物帖・三つの謎』(1960年/監督:佐々木康)を観る。岡本綺堂の原作は有名なのですが、映画化されたのは僅か3本です。テレビドラマでは8作ありますけどね。この作品は三つのエピソードからなるオムニバス型式になっています。
津の国屋の養女が首吊りをして、津の国屋に幽霊騒ぎが発生。桐畑の常吉東千代之介)が調査を開始しますが、津の国屋の主人(明石潮)が失踪。大番頭の金兵衛(原健策)と津の国屋女房お藤が密通しているという噂が流れ、土蔵で二人の首吊り死体が発見されます。二人の首に残った絞跡から他殺と判断され、常吉から相談された半七(片岡千恵蔵)は噂の出どころを調べ、津の国屋の商売仲間の池田屋市川小太夫)が背後にいることをつかみ……津の国屋事件。
遊び人の伊太郎(鶴田浩二)は、梶井三四郎(尾上鯉之助)とお市(中里阿津子)の兄妹のために二人の仇である岩下左内(戸上城太郎)を南蛮渡来の伝声管ズウフラを使って山王の森におびき出しますが兄妹が仇を討つ前に何者かに殺されます。左内の妻・おそよ(花柳小菊)、左内の門弟・平田(加賀邦男)と神坂(清川荘司)から事情を訊いた半七は、伊太郎に策を授けるのね。道場で酒を酌み交わすおそよ・平田・神坂の耳に幽霊の声が聞こえ……ズウフラ怪談。
菊川新八郎(沢村訥升)は恋人お美代(桜町弘子)に無礼を働く異人の首を斬ります。異人の生首を持った御用盗が商家を襲う事件が相次ぎ、半七は常吉に新八郎が斬ったという異人の首を探させ、伊太郎に金使いの荒くなった人形作りを捜すように命じるのね。攘夷浪人の大月(吉田義夫)に匿われていた新八郎は大月から金を受け取りますが、半七が用意した御用盗捕縛のための刻印のついた小判だったことから……異人の首事件
東千代之介鶴田浩二・沢村訥升にアクションシーンは任せ、千恵蔵御大はどっしり構えて推理を働かせるだけ。ミステリーの要素よりも江戸風俗の緻密な考証により江戸情緒満天が原作の特長なんですが、残念ながら原作の良さは出ていません。千恵蔵御大は遠山の金さん的貫禄で、岡っ引きという感じじゃありません。テレビ(1966年と67年にTBS系列で放送)で長谷川一夫が演じた半七が良かったなァ。