一家勢ぞろい

nostalji2016-09-08

友人が送ってくれた東映時代劇『お役者文七捕物暦・蜘蛛の巣屋敷』(1959年/監督:沢島忠)を観る。横溝正史原作の捕物映画です。
勝田家の屋敷近くを通りかかった文七(中村錦之助)は、覆面の侍たちに追われている腰元を助けようとして傷を負います。お半(桜町弘子)に傷の手当を受けた文七は与力の池田大助(中村嘉葎雄)に事情を説明。その頃、勝田駿河守(中村歌昇)の長女・輝姫(雪代敬子)が土蜘蛛の精に襲われるという事件が起こります。勝田家は20年前に土蜘蛛(原健策)と称する一揆があって、首謀者を全員処刑していたのね。勝田家との婚礼を予定していた老中・水野和泉守(山形勲)から相談を受けた大岡越前守(片岡千恵蔵)は、池田大助に究明を命じます。文七の父である歌舞伎役者の歌六中村時蔵)が舞台裏で何者かに襲われて負傷し、勝田家の御用商人である松前屋(進藤英太郎)の頼みで歌六に代わって兄の秀歌(中村芝雀)が輝姫の席に呼ばれますが、秀歌は阿片で眠らされ、そばには輝姫の死体。父と兄の危難を侍女のおとよ(花園ひろみ)から知らされた文七は、得意の変装によって事件関係者に近づき、真相を探ります。事件の背後には勢力拡大を画策する黒幕がおり……
父・時蔵、長兄・歌昇、次兄・芝雀、弟・嘉葎雄と中村一家総出演です。スピーディな物語展開、克明な舞台シーン、そしてラストでの錦之助の大立ち回り(文七は真柄道場の免許皆伝)と、沢島忠はメリハリのきいた演出をしています。特に舞台シーンは、第1ステージに南座より大きい山村座のセットを組み、時蔵十八番の「女暫」をきっちり撮っています。時蔵はこの作品の後に亡くなっていますから貴重なフィルムといえますね。原作は全部で7作あり、シリーズ化の予定でしたか、時蔵が亡くなったことで“お役者文七捕物暦”はこの作品だけで〜す。