娯楽版ついでに

nostalji2016-12-12

友人に頼んで送ってもらった東映時代劇『さけぶ雷鳥(三部作)』(1957年/監督:内出好吉)を観る。東映娯楽版として6月に3週連続で上映されています。
幕府の隠密・伝八郎と圭之介(高木二朗)は、莫大な軍用金と強力火薬の秘密を握る鍔師・光親(加藤嘉)を探っていましたが、伊那姫(丘さとみ)率いる豊臣の残党に伝八郎は斬られ、圭之介は行方不明になります。本間滝太郎(尾上鯉之助)は師匠の柳生飛騨守(永田靖)の要請で、伝八郎の妹・仮名江(若水美子)と伝八郎が殺された信州に向かいますが、光親は娘・早百合(大川恵子)と逃げ去ったあと。光親は秘密を雷鳥の鍔に彫金し死んでしまいます。この鍔を巡って、滝太郎と仮名江、伊那姫と野心家の部下・痣友(原健策)、軍用金によって幕府権力を握ろうとする柳沢吉保(神田隆)と悪徳商人の碇屋(海江田譲二)、欲望のままに生きる邪悪な女・おちゃら(松風利栄子)と情夫の蔵人(徳大寺伸)が四巴の争いを繰り広げるのね。そして、それと並行して、滝太郎と早百合、圭之介と伊那姫の恋の行方が描かれます。
原作は吉川英治の同名小説ですが、内容は大きくかけ離れています。五代将軍・綱吉の時代を舞台にしているのに、伊那姫が石田三成の孫で、鍔の秘密が真田幸村の莫大な軍用金と強力火薬なんて設定が酷過ぎ。伊那姫は何歳なんだァ、強力火薬があったら幸村は大阪城で使っているぞォ。
主演の尾上鯉之助は、歌舞伎の菊五郎一門から従兄弟の東千代之介の薦めで東映に入社し、1957年度のホープとして売り出されました。しかし、演技面での表情がとぼしく、伏見扇太郎のような甘さもなく、人気を得ることなく翌年からは助演に回り、主演としての活躍の場がなくなりました。