分厚かったが

nostalji2017-02-06

山本一力:著の『桑港特急』(文藝春秋:2015年1月30日第1刷発行)を一気読みで読了。江戸末期の文政年間、小笠原の父島に漂着した娘とアメリカ人の元捕鯨船員の間に生まれた丈二と子温の兄弟が、ジョン万次郎との出会いを通してアメリカへの夢を募らせ、ゴールドラッシュのカリフォルニアで様々な人と出会い、成長していく物語です。
二部構成になっており、第一部は兄弟が第二部で出会う人物まで含めた各登場人物の物語が語られ、第二部はアメリカに渡った兄弟が商売を通じて第一部で登場した人物たちとの関係を持ち、商売を妨害する無法者たちとの戦いとなっています。しかし、あくまで兄弟は周辺で起きる事件の傍観者にすぎません。
500ページを超える長編ですが、登場人物が魅力的で躍動感にあふれています。特に物語の中心となる金塊輸送(サンフランシスコ・エキスプレス)のリバティ・ジョーは、部下たちからも信頼されている早撃ちガンマンで、その立ち居振る舞いは西部男の魅力満点。妻と仲間を凶悪なサントス一味に殺され、丈二と子温の協力のもとにサントス一味を田舎町に誘き出して展開する銃撃戦は西部劇としての醍醐味があります。良質な西部小説で〜す。