懐かしい題名で

nostalji2017-07-15

友人に送ってもらった『夕日と拳銃』(1956年・東映/監督:佐伯清)を観る。伊達家の4男坊が得意の拳銃片手に満州に渡り、激動する大陸で活躍するという、檀一夫のロマンあふれる物語です。私がこの物語を知ったのは、1964年9月9日〜12月2日に放送された連続テレビドラマ(大映テレビ室製作)でして、『図々しい奴』の丸井太郎と同様に、大部屋俳優から主役を演じた工藤堅太郎が人気となりました。今回観たのは、ドラマ化されるより以前に東映で映画化したもの。
自由奔放に生きる伊達麟之助(東千代之介)はヤクザと争いになり、何かと味方してくれる綾子(三條美紀)を助けるためにヤクザの親分を撃ち殺します。正当防衛で無罪になったものの、綾子の父・巌山(小沢栄太郎)の薦めでお守役の辺見六郎(宇佐美淳也)と満州へ。麟之助を追って満州に来た綾子は巌山の友人である軍閥張作霖の許に身を寄せますが、麟之助は馬賊パプチャップの軍に加わり蒙古独立運動のために張作霖と戦います。麟之助の奮戦にもかかわらずパプチャップ軍は壊滅。麟之助はパプチャップの遺児チチクを辺見に託し、張作霖と敵対している九曜山(南原宏冶)の集落に行きます。麟之助を恋する九曜山の妹アロン(岡田敏子)は、綾子を想い続ける麟之助に嫉妬して発砲。負傷した麟之助は帰国して綾子と再会するものの、辺見の手紙で再び渡満し、……
馬に乗って拳銃を撃ちまくる西部劇タッチの作品を期待したのですが、麟之助をめぐる女性たちとのロマンス(綾子とアロン以外にも、後に辺見と結婚するヤクザの親分の妹(浦里はるみ)や植木屋の娘にも慕われます)がベタベタ続き、雄大な荒野を舞台にした壮大な物語になっていません。おまけに、東千代之介は感情表現に乏しく、大きな夢を抱く熱血漢にみえないのが致命的。ドラマの工藤堅太郎の方が適役でしたね。作り方次第で、五族共和と王道楽土を信じ、満州桃源郷を造る夢のために活動する男のロマンを描いた作品になったはずなのに残念。綾子の弟役で新人・高倉健が出ていま〜す。