昨日に続き

nostalji2017-08-18

帰省中に友人から送られてきた東映時代劇『炎の城』(1960年/監督:加藤泰)を観る。かの有名な『ハムレット』を時代劇に翻案した作品です。
明国から帰国した王見正人(大川橋蔵)は、友人の多治見庄司(黒川弥太郎)から死んだ父にかわって叔父の師景(大河内伝次郎)が城主になっていること、母(高峰三枝子)が師景の妻になっていること、領民が師景の圧政に苦しんでいることを知らされます。父の死に疑いをもった正人は狂人を装って帰城。しかし、師景の側近・直之進(薄田研二)の娘で正人の恋人・雪野(三田佳子)の目はごまかせず……
後年、監督自身が語っているように、主題を明確にしないまま撮影した壮烈なる失敗作です。スター主義の会社の方針で、ハムレット役の大川橋蔵は死にません。東映時代劇らしく、雪野との悲恋を絡めて、父を殺して城を奪い、母を寝取った極悪人の叔父への単純な復讐物語にした方がよかったですね。原作を尊重しているので、橋蔵の演技は舞台劇のような大仰なもの(原作通りならそれもいいのでしょうが)になっており、チグハグな感じをうけます。伊福部昭の音楽も違和感あり。百姓たちが城に攻め込み、炎の城と化すクライマックス(千人のエキストラを動員した迫力あるシーン)に流れる曲はゴジラの襲撃ですよ。
原作が持つ悲劇の主題をいかしつつ、東映らしいスカッとした活劇を盛り込もうとしたこと自体が無理筋だったので〜す。