比較したくて

nostalji2018-03-01

録画していた『沈黙』(1971年・東宝/監督:篠田正浩)を観る。原作者の遠藤周作と監督の篠田正浩が脚本を書いた文芸時代劇です。
17世紀中頃、九州肥前にキチジロー(マコ岩松)に案内されてポルトガル司祭のガルペ(ダン・ケニイ)とロドリゴ(ディヴィド・ランプソン)が渡来。村人への布教と、行方の分からない先輩司祭フェレイラの消息を探ります。ガルペは平戸に行き、ロドリゴはキチジローの密告により長崎奉行所に捕縛され、奉行・井上筑後守岡田英次)の厳しい詮議を受け、転向をめぐって激しい論争が行われるのね。拷問をうける岡田三右衛門(入川保則)と菊(岩下志摩)の若い夫妻を牢の中で見てロドリゴはショックを受け、さらに捕まったガルペが水刑にされた信徒の後を追って命を絶ったことに絶望感を持ちます。そんな時、すでに棄教していた侍姿のフェレイラ(丹波哲郎)が現れ、「お前が転べば日本人信徒が苦しみから救われる。神は沈黙しているだけだ」と告げ、ロドリゴは転向。牢内には夫の命を救うために棄教した菊が投げ込まれ……
神と信仰の意義を問うのでなく、人間の弱さを徹底して見つめる作品です。ロドリゴと菊の関係や、背信と告悔を繰り返すキチジローが自分の弱さを吐露する遊女(三田佳子)の存在など、大幅な脚色がされています。キリスト教を受け入れることができなかった目線で描いているんですな。テーマの弱さはあるものの、宮川一夫の撮影、武満徹の音楽で、上出来に仕上がっていま〜す。