豪華なセット

録画保存していた時代劇『妖刀物語 花の吉原百人斬り』(1960年/監督:内田吐夢)を観る。歌舞伎の『籠釣瓶花街酔醒』を脚色した内田監督古典芸能4部作の一つです。
絹織物商人の佐野次郎左衛門(片岡千恵蔵)は、皆から慕われる真面目な人物ですが、顔に醜い痣があるため嫁の来てがありません。越後屋(原健策)の勧めで見合いをするものの相手に断られる始末。越後屋に誘われて吉原に行きますが、花魁は誰も気味悪がって近づかず、岡場所あがりの遊女・玉鶴(水谷良重)が次郎左衛門の相手をします。玉鶴にメロメロになった次郎左衛門は、太夫の位に憧れる玉鶴のために妓楼の主人夫婦(三島雅夫沢村貞子)の言うがままに散財。八ツ橋太夫になった玉鶴を身請けする約束を取り交わしますが、信州一円に雹が降り、桑の木が壊滅して商売が破綻します。守り刀の名刀・籠釣瓶(籠で作った釣瓶のように水も溜まらぬ切れ味)を処分して金を工面しようとしますが、徳川家に祟りのある妖刀・村正だったために買い手がつきません。玉鶴の八ツ橋太夫襲名花魁道中を見た次郎左衛門は、魅入られたように行列に斬りかかり……
歌舞伎では八ツ橋太夫の花魁道中を見た次郎左衛門が一目惚れして八ツ橋のもとへ通いつめ、かなわぬ恋の果ての狂乱ですが、本作では遊女に育った女の欲と、愛にめぐまれなかった男の悲劇にしています。岡場所あがりと馬鹿にする同僚を見返すために太夫の位欲しさに次郎左衛門を利用し、邪魔になる情夫(木村功)とも情け容赦なく手切れするふてぶてしい女を水谷良重が好演。彼女の初期の代表作というのが納得です。東映全盛時の作品とあって、テレビ時代劇のせせこましい吉原のセットと異なり、豪華絢爛。セットや衣装を見るだけで目の保養。内田吐夢の演出は、華やかさと暗さを重ねて描き、重厚な作品に仕上げていま~す。

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