広島が舞台で

録画していた『愛と死の記録』(1966年/蔵原惟繕)を観る。大江健三郎の『ヒロシマ・ノート』の中にある実話をもとにした純愛映画です。吉永小百合被爆者の声を伝える活動のきっかけとなった作品。
レコード店に勤める和江(吉永小百合)は印刷会社で働く幸雄(渡哲也)とひょんなことから知りあい、愛しあうようになります。4歳の時に被爆した幸雄は、いつ発病するかわからない状態。ある日、作業中に貧血で倒れ、幸雄は和江に原爆ドームで自分の運命を語ります。入院した幸雄を、和江は毎日看病し、全快を祈って黙々と千羽鶴を折りますが……
和江と幸雄の出会いのきっかけとなった友人役で中尾彬と浜川智子が出演。前半はこの4人が繰り広げるラブドラマ。渡哲也はこの手のドラマに慣れていないせいかギコチなさが目立ちますが、逆に素人っぽいところが新鮮でグッド。背景の広島風景も原爆からの復興が全面に出ています。しかし、幸雄が倒れた後半からは、原爆(被爆者)の悲劇が中心となり、広島風景も平和公園原爆ドーム。和江の相談相手の女性(芦川いづみ)の首にケロイドがあるのをチラッと見せたりしてね。この映画は、幸雄の死で終わるのでなく、全てに踏ん切りをつけた和江の自殺で終わります。『愛と死をみつめて』のような不治の病をめぐる若者の純愛でなく、本人の責任のない原爆の後遺症で若者の恋が崩壊する悲劇を描いており、純愛でなく殉愛で~す。

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