新作時代劇なので

録画していた『帰郷』(2019年/監督:杉田成道)を観る。老い先を悟った老ヤクザが故郷に戻り、自分の娘のために命をかける物語です。
無宿渡世の老ヤクザ・宇之吉(仲代達矢)は、自分の死が近いことを感じ、故郷の木曽福島に帰ってきます。町外れで10数人を相手に斬りあいをしている男・源太(緒形直人)を目撃。逃げた源太を追うヤクザたちは、かつて宇之吉の兄貴分だった九蔵(中村敦夫)の子分で、九蔵も今では独立した親分。30年あまり昔、宇之吉(北村一輝)は姐さん(三田佳子)の頼みで親分の罪を被り、好きな女・お秋(前田亜季)を捨てて江戸へ出奔。今は親分も姐さんも死に、組では宇之吉のことを知るものはいません。食客として草鞋を脱ぎ、同じ食客の栄次(佐藤二朗)から、飲み屋で働くおくみ(常盤貴子)を九蔵が妾にしようとして、おくみと恋仲だった源太が九蔵に斬りつけ、源太が九蔵一家に追われていることを知らされます。そして、神社で行われる山博奕の日、宇之吉は幼馴染の佐一(橋爪功)と再会し、おくみがお秋の子で、宇之吉の娘ということを知らされ……
原作は藤沢周平の短編。若き日の宇之吉の行動が並行して描かれ、贖罪を負った老ヤクザの姿は、仲代達矢でないと出来ない役です。もう10年若ければもっと良かったんですけどね。中村敦夫もね。情感あふれる内容で悪くはないのですが、対決シーンは緊迫感が不足しています。ヤクザの子分たちに、昔の大部屋俳優と違って何かギラギラ感がないんですよ。底辺の部分の層が薄くなっているのを痛感。美術や映像技術には時代劇としての可能性はありますが、問題は人ですなァ。時代劇は数多く作らなきゃいけませ~ん。

f:id:nostalji:20200214070451j:plain