前作とセットで

月村了衛:著の『コルトM1847羽衣』(文藝春秋:2018年1月10日第1刷発行)を読了。時代小説なのに殺陣よりも銃撃に面白みがあります。
主人公は女渡世人の羽衣お炎。武器はコルトM1847ウォーカー。なにしろ大型拳銃なので、被衣(かつぎ)に隠して背負っています。佐々木小次郎の刀のようなものね。命を助けた長崎の豪商・四海屋から、行方不明となっているお炎の想い人が無宿人として佐渡に送られたという情報を聞いてお炎は佐渡へ。お炎は佐渡金山を探りますが、佐渡金山では“オドロ様”なる奇怪な像を信仰する邪教が広がっており、オドロ教の神官一味やオドロ教を利用している佐渡奉行一味に狙われます。オドロ教は鉱夫にアヘンを吸わせて働かせているんですな。佐渡奉行は金の採掘がはかどるので見てみぬふり。オドロ教の目的が、江戸へ送る御用金強奪とわかり……
前作のコルト・ネイビーから今回はコルト・ウォーカー。パーカッション拳銃でネイビーと同じ構造ですが、ネイビーよりも重く、女性が扱うには大変な代物です。お炎は、長崎商館のオランダ人のもとで修業してウォーカーをマスター。握りをつかんだ右手を左手で支える両手撃ち、横にした左腕に銃身を上から添える支え撃ち、袂を返した左手で直接銃身を握る握り撃ち、そして必殺のファニング。
前作の主人公が一匹狼だったのに対し、本作ではお炎を姐御と慕う短剣投げの女軽業師おみん、四海屋が雇っている裏稼業の玄人衆が仲間となってお炎を助けてくれます。前作がアンチヒーローマカロニウエスタンなら、こちらは良い奴と悪い奴がはっきりしていて王道西部劇といえますな。江戸時代のガンマンという新しい時代劇ヒーローの誕生で~す。

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