アトラクション映画でなく

ホアキン・フェニックスアカデミー賞主演男優賞を受賞した『ジョーカー』(2019年/監督:トッド・フィリップス)を録画して観る。DCコミック“バットマン”シリーズの狂気の悪役ジョーカーの誕生を、原作にはないオリジナルストーリーで描いています。

アーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)はコメディアンを夢見る心優しい男ですが、突然笑いだすという脳に障害を持っており、周囲から冷たい反応や暴力を受けています。ピエロのメイクで大道芸人をして日銭を稼いでいますが、生活は困窮状態。母親のペニー(フランセス・コンロイ)は、かつて働いていたトーマス・ウエイン(ブレット・カレン)宛てに、もう一度働かせてくれるように手紙を書いていますが無しのつぶて。仲間に拳銃を無理やり持たせられ、児童施設でウッカリ拳銃を落としたことからプロダクションを馘になり、ピエロのメイクのまま電車に乗っていたら、三人のサラリーマンに絡まれ、撃ち殺してしまいます。殺した三人がウエインの会社の社員だったことから富裕層に反感を持つ貧困層がアーサーを英雄視。妄想と現実の区別がつかなくなってくる中、アーサーは憧れていたマレー・フランクリン(ロバート・デ・ニーロ)のトーク・ショーに呼ばれ……

妄想なのか現実なのか、意図してわからないように演出しているので、色々深読みできるような内容になっています。観客に考えさせるという狙いは成功ですな。アーサーの絶望が狂気へと変わっていく姿は現実で、病めるアメリカ社会を描いており、ジョーカーのメイクをして悪のカリスマ的存在となっていくのは、DCコミックに繋げるアーサーの妄想。脳障害による笑いと、ジョーカーになったアーサーの笑いは違っており、ホアキン・フェニックスの演技にかける凄さを感じま~す。

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