大河の参考に

時代考証学会・大石学:編の『時代劇制作現場と時代考証』(岩田書店:2013年10月31日第1刷発行)を読了。時代考証学会第4回シンポジウムの記録集でNHK大河ドラマを中心に編集されています。

時代考証は時代とともに変わってきており、時代劇映画全盛時はその殆どが監督や脚本家に委ねられていました。溝口健二伊藤大輔のようにリアリズムを重視する監督は綿密な時代考証をしていましたが、東映の娯楽時代劇は考証無視。それでも、長年培われてきた経験により、セリフまわしや所作は誰もが納得する時代劇でした。時代劇が映画からテレビに移行し、粗製乱造状態となり、娯楽時代劇と大河ドラマのような歴史時代劇に区分されるようになります。マゲをつけていれば何でもありの娯楽時代劇と違って、歴史時代劇は稲垣史生、林美一、名和弓雄などの歴史考証家が担当。しかし、彼らの考証は、出典記載が不十分であったり、歴史学その他の学問的成果を十分に活かせないのが弱点で、現在では様々な分野の専門家が考証・指導・監修として関与しています。例えば、2010年の大河『龍馬伝』では、時代考証・建築考証・衣装考証・船舶考証・所作指導・軍事指導・殺陣武術指導・邦楽指導(月琴・三味線・太鼓・一弦琴など)・方言指導(土佐・江戸・長州・薩摩・長崎など)・芸妓指導やカステラ作り指導まで多種多様。

最近はマンガを原作にした時代劇が作られていますが、大河ドラマほどでないにしても、現代劇でなければいいというスタンスでなく、ちゃんとした考証のもとに時代劇を作って欲しいで~す。

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