今週は中島貞夫

録画していた『鉄砲玉の美学』(1973年/監督:中島貞夫)を観る。“鉄砲玉”として敵地に乗り込んだチンピラの欲望と破滅を描いたアクション映画です。

小池清渡瀬恒彦)は、血気盛んなチンピラやくざ。関西を拠点とする広域暴力団・天祐会は急襲進出のために“鉄砲玉”として小池を宮崎へ送り込みます。拳銃とともに百万円を渡された小池は、盛り場で暴れまくりますが、地元暴力団組織の幹部・杉町(小池朝雄)は静観。杉町が裏で手を回している中、小池は本来の役目を忘れて大いにはしゃぎまくり……

東映屈指の有能な職人監督だった中島貞夫が、新天地を求めATGと独立プロの共同製作で映画作りに挑戦した作品です。とにかく予算がないので、抗争劇のシーンはなし。百万円の金と命を引き替える快楽、親分や義理のためでなく、単なる快楽のために、そこに入り込んでしまう人間の欲望を描いています。渡瀬恒彦の一人芝居といった感じの作品で、鬱屈した青年を見事に演じており、観終わった後、哀切感が漂いますよ。当時は、ATGファンにもヤクザ映画ファンにも不評だったようですが、アメリカン・ニューシネマの感じがして面白かったで~す。

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