実在した人物といっても

録画していた『脱獄広島殺人囚』(1974年/監督:中島貞夫)を観る。自由を渇望するあまり、7回に及ぶ脱獄を敢行した男を描くクライムアクションです。

終戦混乱期の昭和22年、植田(松方弘樹)は仲間の田上(渡瀬恒彦)とモルヒネ密売人を襲って殺し、懲役20年の刑を受けて広島刑務所へ入所。翌年、脱獄して妻のいる神戸に潜伏しますが、捕まって広島刑務所に戻されます。服役中の岡本組の組長(若山富三郎)と知りあった植田は、脱獄経験のある末永(梅宮辰夫)を同房にしてくれるように依頼。そして、末永、小島(西村晃)と再び脱獄して、妹(大谷直子)が暮らす四国へ逃走しますが……

18年で出所できるのに、脱獄を繰り返すたびに刑期がのび、最終的には41年の刑期となった男に取材した実録作品。脱獄後のことはフィクションですが、刑務所はかなりリアルに描いているとのこと。ただし、昭和20年代の刑務所ですけどね。

松方弘樹の好演もさることながら、大谷直子の家の裏庭で、闇で牛を屠殺している室田日出男と川谷拓三がグッド。被差別部落在日朝鮮人といった社会問題を、さりげなく織り込んでいるところに中島貞夫らしさを感じますね。粗っぽい演出なのですが、勢いがあるので一気に見せてくれま~す。

f:id:nostalji:20210301065046j:plain