お次は刺青

録画していた『徳川いれずみ師 責め地獄』(1969年/監督:石井輝男)を観る。女体に墨を入れることに情熱をささげる彫師を描いた官能時代劇です。

いれずみ師・彫五郎の弟子・彫秀(吉田輝雄)は、刺青した女ばかりの売春宿の新参女郎・由美(片山由美子)の肌に惚れ込んで墨を入れます。売春宿の女将・お竜(藤本三重子)は由美をレズ相手にしており、由美を犯した弦造(林真一郎)を殺害。売春宿から逃げ出した由美は、与力の鮫島(田中春男)に捕らえられ、弦造殺しで火あぶりの刑になります。鮫島とお竜は、裏で刺青女の人身売買をしている長崎領事のクレイトン(ユセフ・ホスマン)と結託して、女郎やお絹(葵三津子)たち女囚を長崎の異人館へ移送。彫秀は、彫秀の腕前を妬んでいる兄弟子の彫辰(小池朝雄)と鮫島の悪計により彫五郎殺しの罪をきせられ、島送りになります。お竜は彫秀の恋人お鈴(橘ますみ)に目をつけ、弦造の妹ゆき(尾花ミキ)とともに長崎へ送り、彫辰がお鈴に刺青。お鈴は服毒し、島破りして長崎にきた彫秀に一部始終を語って死にます。復讐の念にもえた彫秀は、クレイトンの娘ハニー(ハニー・レーヌ)を誘拐して墨を入れますが……

次々に見せ場を繰り出す、そのめくるめく映像展開に圧倒されます。女が逆さづりになっているのを、素通しの1枚ガラスの下から撮ったり、カメラを天井にすえて真上から長まわしで人物を追ったり、無国籍めいた混沌とした街を、女二人が逃げまわるのをえんえんと撮ったりと、面白がって演出していますね。必要性はないのに、串刺しの刑、ノコギリでの首切りの刑、股裂きの刑などグロへのサービスも忘れていません。

気の弱い男や人の好いオヤジ役が多い田中春男が、白塗りの悪役。これまでにない役で田中春男は嫌々演じている感じ。藤本三重子という女優を知らなかったのですが、女優でなく歌手だったのね。ヒット曲がないので、知らなくて当然。

石井輝男のエログロ時代劇路線は、撮影所内の反発からこれが最後になります。だけど、『恐怖奇形人間』など、形を変えて石井ワールドは東映の中で続いていきま~す。

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