未見だったので

録画していた『現代任侠史』(1973年/監督:石井輝男)を観る。堅気になっていた男が、悪徳ヤクザの理不尽なやり方に任侠道をつらぬく物語です。

銀座「鮨銀」の主人・島谷良一(高倉健)は、戦死した父の遺品の刀がアメリカにあるとわかり、渡米してこれをひきとります。マスコミはこれを大きく報道。ルポライターの仁木克子(梶芽衣子)も彼を取材し、彼に惹かれます。良一は、以前は松田組の最高幹部でしたが、姐さん(三益愛子)の顔を立て、実子の初治(郷鍈二)に跡目を譲って足を洗いましたが、今でもかつて兄弟分だった初治、松田組若頭となった中川(成田三樹夫)、分家した船岡(夏八木勲)と固い契りを維持。そんな中、大阪の永井組の若頭・栗田(安藤昇)が上京し、資金源のノミ屋の縄張り争いを防ぐ連合会結成を提案。松田組総長の初治は、関東ヤクザを支配しようとする関口(小池朝雄)が関東で名を売ろうとする永井(内田朝雄)と結託した策略と考え反対します。関口と永井の背後には、政界の黒幕・湯浅(辰巳柳太郎)がいて、ノミ屋の収益をピンハネして政治資金にする計画。松田組をつぶそうとする関口組の挑発がはじまり……

任侠映画10周年記念映画として企画されましたが、皮肉なことに1963年の『人生劇場 飛車角』から始まる東映任侠路線の最後の作品になりました。およそ場違いな橋本忍を脚本に起用したのが間違いね。堅気の健さんは、成田三樹夫たちの相談相手にすぎず、抗争の傍観者。そのため、鮨屋の店員(田中邦衛南利明)とのやり取りや、梶芽衣子とのラブロマンスに重点を置きすぎています。徹底してアップで狙った梶芽衣子の多彩な表情を堪能できたのは私としては満足なんですけどね。郷鍈二、夏八木勲と殺され、抗争をおさめようとしていた安藤昇成田三樹夫と一緒に殺され、健さんは怒りの殴り込み。辰巳柳太郎・内田朝雄・小池朝雄の3人は、健さんとは顔を合わせておらず、何で健さんに殺されるのかわからなかったでしょうね。こんな脚本では、石井輝男らしい毒気を出すこともできず、完全に失敗作で~す。

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