時代劇から

録画していた『殺すな』(脚本:中村努、監督:井上昭)を観る。時代劇専門チャンネルのオリジナル時代劇です。原作は藤沢周平の『橋ものがたり』の中の一編。

裏長屋で筆作りをしている浪人・小谷善左衛門(中村梅雀)は、船頭の吉蔵(柄本佑)から一緒に暮らすお峯(安藤サクラ)の様子を見張るように頼まれます。二人は、元は船宿の女房と船頭でしたが、密通のうえ駆け落ち。隠れるように暮らしていましたが、お峯は退屈な生活に虚しさを感じています。気晴らしのために川向こうへと架かる橋を渡りたいと思うお峯と、居場所が見つかるのを恐れる吉蔵の間にすきま風。吉蔵は、「橋を渡ったら殺す」と言い出す始末。善左衛門は愛していながら妻を殺してしまったかつての自分と吉蔵を重ね合わせます。ある日、吉蔵がお峯の亭主・利兵衛(本田博太郎)と偶然会ってしまったことから……

井上昭の遺作となった作品。井上昭は大映で多くの作品を残しており、テレビでも多くのドラマを手がけました。傑作はありませんが、奇をてらったところがなく、手堅い演出で安心して観ていられる監督だったです。この作品も男女の機微をじっくり描き、良質の人情ドラマになっていま~す。

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