未見だったので

録画していた『ゼロの焦点』(1961年・松竹/監督:野村芳太郎)を観る。松本清張のベストセラー小説を映画化したサスペンス映画です。

禎子(久我美子)は、東京本社へ転勤が決まった広告会社の金沢出張所長の鵜原憲一(南原宏治)と見合い結婚しますが、新婚七日目に憲一は金沢へ業務の引継ぎに行って失踪。憲一の同僚と事情を調べに金沢へ行きますが、金沢在任中に憲一が暮らしていた家すらわからない仕末。

憲一が親しくしていたという煉瓦会社の社長・室田(加藤嘉)を訪ねますが、室田も夫人の佐知子(高千穂ひずる)も心当たりがないと言い、手掛かりがつかめません。憲一の兄・宗太郎(西村晃)が金沢へやって来たので、後を任せて禎子は帰京。憲一が広告会社に入社する前に立川警察でパンパンの取締りをしていた警官だったことを禎子が知った頃、宗太郎が毒殺された連絡が入ります。憲一が金沢で一緒に暮らしていた田沼久子(有馬稲子)が別れるのを恨んで憲一を殺し、それを知った宗太郎も殺し、自殺したものとして警察は捜査を終えますが……

モノクロ映像で描き出される能登の風景が詩情豊かに謳いあげられ、映画の内容とマッチしていてグッド。犯罪の原点ともなる能登半島の独特の雰囲気が犯罪の動機とも関連づけています。それと、ヒロインが失踪した夫を求めて北陸へ旅立つプロセスが自然。脚本は橋本忍山田洋次によるものですが、ヒロインの推理と真犯人が語る真相の二重の謎解きにしているのが面白いです。ラストの断崖上でのヒロインと真犯人対決は、テレビの2時間サスペンスの定番シーンに影響を与えていま~す。